夏休みは、静かに終わってしまった。
あんなに長いと思っていた毎日は、振り返ってみると驚くほどあっという間で、気づけばカレンダーは九月に変わっていた。
花火大会の日も、ひまわり畑へ行った日も、夕暮れの海で並んで波の音を聞いていた時間も、全部まだ昨日のことみたいに思い出せるのに、季節だけはちゃんと前へ進んでしまう。
朝、制服に袖を通した瞬間、胸の奥が少しだけ寂しくなった。
夏休みの私服とは違う制服の重みが、「もう日常に戻るんだよ」と言っている気がしたから。
窓を開けると、まだ蝉は鳴いている。
それでも、お盆の頃の強い日差しとは少し違う。
風は少しだけやわらかくなっていて、夏の終わりを運んできているみたいだった。
「行ってきます」
通い慣れた道を歩きながら、私はふと空を見上げた。
あの日、海で晴海に「夏の空みたいだね」と言ったことを思い出す。
あの時の晴海の少し照れたような顔まで、ちゃんと覚えている自分が少し恥ずかしい。



