「頑張ったね。ちゃんと大塚くんに向き合ったんでしょ?怖かったと思うよ」
緑はそう言って頷いた。
「大切にしてくれた人に、同じものを返せないって伝えるのって、簡単じゃないから」
その言葉に、昨日の夕暮れの教室を思い出す。
「……うん」
小さく返事をすると、緑は少しだけ表情を変えた。
「晴海のことなんだけど」
その名前を聞いただけで、胸の奥が小さく反応した。昨日から、晴海という存在に何度も心を揺らされている気がする。
「晴海?」
「晴海とは偶然会ったって言ってたよね」
「うん。大塚くんとはぐれて……その時に会ったから」
あの瞬間のことを思い出す。
人混みの中で見つけた晴海の姿。
まさか会えるなんて思っていなかったから、あの時はただ嬉しくて、安心してしまった。



