ありがとうも、ごめんなさいも、ちゃんと伝えたはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
大塚くんは最後まで優しかった。
私が傷つけたはずなのに、最後に見せた笑顔は、私を責めるものじゃなかった。
「……っ」
泣くつもりなんてなかった。大塚くんの前でも、ちゃんと笑って終わらせたかった。
でも、優しい人を傷つけたことが悲しくて、これまで積み重なった時間が消えてしまうような気がして、涙は止まってくれなかった。
その時だった。
廊下を走るような足音。
次の瞬間、勢いよく扉が開く。
「夏井!」
聞き慣れた声に、私はゆっくり顔を上げた。
そこにいたのは、晴海だった。
「……晴海?」
どうしてここに……。
晴海は息を切らしていて、いつもの余裕のある表情はどこにもない。
私の顔を見るなり、目を見開く。



