教室に入ると、いつもと変わらない朝の空気が流れていた。
窓から差し込む夏の日差しは眩しくて、机の上に落ちる光の形さえ昨日までとは違って見えた。
昨日の夜、あれほど特別だった時間も、朝になれば夢みたいに遠く感じる。
席に着いて鞄を置くと、隣の椅子が引かれる音がした。
「おはよ」
振り向くと、晴海がいつものように少し眠そうな顔で笑っていた。
その何気ない表情を見ただけで、昨日の夜空が一瞬で蘇る。
花火の光に照らされた横顔。楽しそうに笑う声。人混みの中で偶然隣にいられた時間。
全部が鮮明で、私は一瞬だけ言葉を失った。
「……おはよ」
やっと返した声は、自分でも分かるくらい少しだけ小さい。
「昨日、ちゃんと帰れた?」
そう聞くと、晴海は少し笑った。
「途中で人多すぎて迷子になるかと思った」
その言葉に思わず笑ってしまう。



