「……夏井」
いつもと違う呼び方に、自然と顔を向ける。晴海は少しだけ照れたように笑っていた。
そして、少し迷うように視線を逸らしてから、静かに口を開く。
「名前、呼んでほしい。下の名前」
「……。」
「…知らなかったら、いいんだけど」
……知らないわけない。
………私がどれだけノートにその名前を書いたか、晴海は知らないでしょう?
溢れそうな気持ちに、ぎゅっと蓋をしている。
でも、もういつ外れてもおかしくない。
なら、いっそのこと少しだけ開けてみよう――この想いが伝わればいい、そして少しだけ焦ればいい。
授業中、何度もノートに書いたその名前を。
心の中で、もう何度も呼んだその名前を。
今、大切に口にする。
「…ほ、たか」



