晴海に手を引かれるまま、人の波を抜けてたどり着いた先は金魚すくいの屋台だった。
赤や白の小さな影が水の中で揺れていて、提灯の淡い光が水面に反射している。
「俺、金魚すくいしてみたかったんだよなー」
おじさんから網を受け取った晴海が、水槽の前にしゃがみ込む。
「ほら、夏井も」
えっ…?私もやるの?
というか、晴海は、本当にみんなと合流しなくていいの…?
晴海が私の分も網をもらって、戸惑いながらも隣に同じようにしゃがむ。
「夏井。勝負しない?」
「勝負?」
「負けたほうが、勝ったほうの言うこと一つ聞くっていうのはどう?」
その提案に、思わず顔を上げる。
「……なんでもいいの?」
聞き返すと、晴海は少しだけ笑って、「できる範囲なら」と答えた。
その瞬間、頭の中にいくつものお願いが浮かぶ。
晴海に何か可愛い服を着てもらうとか。普段見ることのできない姿を見てみたいとか。
バスケをしているところを、もう一度近くで見てみたいとか。
そういうことしか頭に思い浮かばないけど、いいの?



