『……――』
電話の向こうで何かを言う声がかすかに漏れる。
「大丈夫。俺からしたら、好都合だから」
好都合。
…なにが?なにが、好都合なんだろう。
晴海はそれ以上何も話さず、通話を切った。
「……晴海、どういうこと?」
震えそうになる声を押し隠しながら尋ねる。
「なんで勝手に切ったの?」
返事はない。ただ、晴海は黙ったまま私を見つめていた。
その表情は、いつもの柔らかな笑顔じゃなかった。
どこか苦しそうで、何かを押し込めるみたいに唇を結んでいて、夏祭りの灯りがその横顔に淡い影を落としている。
こんな顔、見たことない。
「……大塚が、合流できそうにないから俺といてって」
「……っ、」
「はぐれてごめんって謝ってたよ」
「そ、そんなの……私が……」
差し出されたスマホを、「はい」と短く言われて受け取る。
画面にはさっきまで繋がっていた大塚くんの名前が残っていた。



