青に溶ける、きみ。




「かわいい。やっぱ似合ってんね、浴衣」

「……か、かわいい?」

「うん。りんご飴持ったら、もっとかわいい」



あまりにも自然に、照れた様子もなくそんな言葉を口にするから、一瞬返事を忘れてしまう。


夏の風よりも軽やかで、花火が上がる前の静かな夜空みたいに穏やかな声。


その笑顔も、その眼差しも、少し照れくさそうに細められた目元も、全部まっすぐ私だけを見ていた。


そのことが、苦しかった。


こんな優しさを向けられる資格なんて、今の私にはない。


隣を歩いているのに、胸の中ではずっと別の人の名前ばかりが波のように寄せては返している。


さっき人混みの向こうで目が合った瞬間も、今こうして大塚くんが笑いかけてくれているこの瞬間も、心はどこか遠くへ置き去りのままだった。



……………こんなの、ひどい。



「夏井?どうした?」



不思議そうに顔を覗き込まれて、慌てて笑顔を作る。