「夏井、どうした?」
心配そうに覗き込む声に、はっと我に返る。
「……なんでもないよ?」
慌てて晴海から視線を逸らし、大塚くんのほうへ向き直る。
「りんご飴かぁ……いちご飴も美味しそうだよね。どっちにしようかな」
自分でも不自然なくらい明るい声を出してみる。
屋台に並ぶ飴細工をじっと眺めて、考えるふりをして、どうにか頭の中からあの人の姿を追い出そうとした。
大丈夫。ただ目が合っただけ。
晴海は少し驚いた顔をしただけで、私の隣にいるのが大塚くんだなんて、きっと気づいていない。
人も多いし、すぐに見失ったはず。
だから、大丈夫。
……でも、その言葉は波打ち際に書いた文字みたいに、次の瞬間にはさらわれてしまう。
……。
……………大丈夫って、何が?



