グラスの中の炭酸は少しずつ静かになっていく。
泡が消えていく様子をぼんやり眺めていると、「そろそろ行く?」と大塚くんが立ち上がった。
店を出ると、雨はすっかり止んでいた。濡れたアスファルトが夕日を映してきらきらと光っている。
さっきまでの灰色の空は嘘みたいに薄い青をのぞかせていて、湿った風が頬を優しく撫でた。
「晴れたね」
「だな」
傘を閉じた大塚くんが笑う。
二人で並んで駅まで歩く。雨上がりの街はどこか静かで、車が水たまりを踏む音だけが遠くから聞こえてきた。
「今日はありがと」
「え?」
「誘ってよかった」
照れくさそうに笑う横顔を見て、私も小さく笑う。
「……私も楽しかったよ」
それは本心だった。
だけど、その"楽しい"は大塚くんが期待しているものとは違う。
きっと私は、この先も友達としてしか笑えない。そのことを伝えなきゃいけない。
駅前まで来ると、人通りが少し増えていた。もうここでお別れだ。



