「……あ、あそこ」
大塚くんが通りの向こうを指差す。ガラス張りの小さなカフェ。雨に濡れた木の看板がしっとりと光っている。
「入る?」
「カフェ?」
「うん。雨もまだ止みそうにないし」
確かに、さっきより弱まったとはいえ、空はまだ薄暗い。制服の裾も少し湿ってきていた。
「……うん」
小さく頷くと、大塚くんは嬉しそうに笑った。
「じゃ、決まり」
扉を開けると、カラン、と小さなベルが鳴る。冷房のひんやりした空気と、コーヒーの香ばしい匂いが一気に身体を包んだ。
「涼しい……」
「生き返るな」
窓際の二人席へ案内される。窓の外では雨粒がガラスを伝い、ぼやけた街並みをゆっくり流していた。
制服姿のまま向かい合って座るのが、なんだか照れくさい。
「何飲む?」
「えっと……」
どれもおしゃれな名前ばかりで迷ってしまう。



