茜くん、ちょっと落ち着こう!?

それから射的屋さんを手伝い、店主さんから「遊んできな〜」とゴーサインが出たので、無料券を握りしめてお祭りを回る。
りんご飴やたこ焼きなどの屋台を人混みに紛れながら歩く。
「......で、何でお前らも着いてくるんだ!」
「えー、だってなぁ〜?」
ラムネを飲んでいる迅くんが要くんを見た。
「男二人で祭りを回るのは嫌だろ。どうせなら椿芽チャンみたいに可愛い子と―――」
ガンッ。
またプロレス技をかけられる要くん。
鈍い音と同時に、要くんが綺麗に地面へ転がった。
「いった......」
「次同じようなことしたら常磐(ときわ)と同じようになる呪いかけるぞ」
「待って、常磐と同じになるなら死んだ方がマシ」
要くんが真顔でそう言うと、迅くんが吹き出した。
「確かにあの変態と同じになるのは嫌だね」
曰く、その常磐さんというのは自他共に認める覗き魔なんだとか。
「誰があいつを崇めるかよ」
茜くんが吐き捨てるように言うと、私は思わず首を傾げた。
「神様......なんだよね?その常磐さんも」
「うん」
(神様でも変態はいるんだね......)
そんなことを思いながら神社の奥にある石段のところに向かうと、あまり人がいなかった。
「あまり人いないんだね」
「いや......結界でも張ったんだろ。―――おい常磐、出てこいや」
茜くんが近くの木の上に声を掛けると、赤い着物を緩く着た男性が降りてきた。
「ヤッホー!」
ニコニコ笑顔の二十代くらいの男性が私に手を振る。
「僕は常磐。知恵の神だよ!こんなに可愛い女の子に出会えて嬉しいな!!」
「お前、何で結界なんか張ったんだよ。あと、椿芽に近寄るな」
茜くんは私の前に立ち、ぴたりと距離を遮った。
「ふーん」
常磐さんは面白そうに目を細めた。
「素直で良いねぇ」
常磐さんが私の方に手を伸ばし、何かを手繰り寄せると一切触れていないのにぐん、と体が前に倒れそうになる。が、寸のところで茜くんが支えてくれたので倒れずに済んだ。
「久しぶりに見たよ、こんな凄いやつ」
「え、何したの?」
迅くんが首を傾げる。
「この子に巻きついてる糸を引っ張っただけだよ。にしても、頑丈だねぇ......何したの?」
「まぁ、色々ありまして......」
「ふーん......。ま、何かあったら言ってよ。これ、僕の連絡先ね」
常磐さんはガサゴソと名刺のような物を取り出し、私に手渡した。
万事屋(よろずや) 店主 常磐』
「よろずや......?」
「そうそう。猫探しから浮気調査まで、幅広い要件を扱ってるよ!依頼をしてくれると何でもするってこと〜」
「お前......現世でそんなことしてたのかよ」
「うん!僕は高天原より現世の方が性に合っているからね」
常磐さんはあっけらかんと言い切り、肩をすくめた。
「も〜、そんな顔しないでよ〜!僕、君達のホームステイ先の家主なんだよ?」
「知るか」
「ホームステイ?」
「高天原より現世を好んでそのまま定住する者が一定数いるんだ。そういった神の家に行って課題期間中の短期間だけ住まわせてもらうんだ」
「つまり、居候って訳」
(神様でも、普通にシェアハウスみたいなことするんだ......)
「で?」
常磐さんが私の方を見て、にっと笑う。
「お嬢さんは、どこまで知ってるの?」
「どこまで......?」
首を傾げると、茜くんが一歩前に出た。
「俺達が神ってことは知ってる」
「あらら、全部じゃん」
常磐さんは一瞬驚いた顔をするが、また胡散臭い笑みに戻った。
「困ったら頼りなよ。知恵の神は、味方にすると便利だからさ」