宏樹との二度目の再会を約束した翌日の土曜日。
優花が自宅で次の撮影に向けて服装をチェックしていると、スマートフォンが震えた。
画面に表示された名前は──
美咲。新婚旅行から戻ったばかりだ。
「優花! 今ちょっと時間ある? 話したいことがあってさ!」
弾む声には、幸せいっぱいの色が混じっている。
「美咲、おかえり! もちろん大丈夫だよ!」
そこから二人は久しぶりに長電話をした。
美咲は旅行での出来事を楽しそうに語り、優花も心からそれを祝福した。
しかし、旅の話が一段落したところで、美咲の声がふっと変わった。
「……さて。旅行の話はこのへんにして、本題に入ろっか」
「え、本題?」優花は胸が一瞬ざわついた。
「二次会の後ね、恵理と淳子から聞いたんだよ。
『優花と宏樹が二人でずーっと話してた』って。
ねぇ優花、正直に言って。宏樹とどうなってるの?」
美咲の勘の鋭さは昔から変わらない。
優花が五年間抱き続けた想いも、美咲は誰より知っている。
嘘なんてつけるはずがなかった。
優花は静かに息を吸い、正直に打ち明けた。
「実はね……あれから宏樹と、二回、二人で会う約束をしたの」
「ええぇ!? 二回!? マジで!?」
美咲の反応は予想通り大げさだったが、その興奮が優花を緊張から解き放った。
「それって完全にデートじゃん! 何話したの!? 早く教えて!」
笑いながら促され、優花はブーケトスでの出来事、二次会で連絡先を交換したこと、
そして夜景撮影での宏樹の言葉──
仕事の重圧や、「心の平穏」を求めていたことを丁寧に語った。
「……それでね、来週の日曜日も会う約束をしたの。
東京駅の近くで夜景を撮りに行くって。
すごく忙しいのに、時間を作ってくれて……」
美咲はしばらく黙ったまま聞いていたが、
やがて、じんわりと温かい声で言った。
「優花……やっとだね。
五年越しの想いが、ちゃんと動き出したんだよ」
その言葉に、優花の視界が少しだけ滲んだ。
「宏樹が弱音を話したって……あれ、すごいことだよ。
あの宏樹が人に愚痴を言うなんて、めったにないもん。
優花だけ、特別なんだよ。絶対」
胸につかえていた不安が、ふっと溶けていく。
「しかも優花のやり方がほんと上手い。
趣味を一緒に楽しんで、寄り添って……
ただの同窓生じゃないよ。
ちゃんと“デートしてる”じゃん!」
その言葉で、優花の心に灯っていた小さな光が、確かな強さを持った。
「ありがとう、美咲。
私ね、もう昔みたいに遠くから見てるだけじゃなくて……
今の宏樹を支えたいの。
次は、私が彼を“心の平穏”に導いてあげたい」
ヘッドフォンのことはまだ秘密にしておくことにした。
けれど、自分の気持ちはもう「片思い」ではない──
そのことを、美咲への報告で再確認できた。
「優花なら絶対大丈夫! 私、全力で応援するからね!」
電話を切り、鏡の前に立つと、
そこに映る自分の表情は、かつての控えめで不安な顔とは違っていた。
自信と期待に満ちた、恋する女性の顔。
優花はそっと微笑み、
明日の自分へ、美しく前向きな決意を刻んだ。
優花が自宅で次の撮影に向けて服装をチェックしていると、スマートフォンが震えた。
画面に表示された名前は──
美咲。新婚旅行から戻ったばかりだ。
「優花! 今ちょっと時間ある? 話したいことがあってさ!」
弾む声には、幸せいっぱいの色が混じっている。
「美咲、おかえり! もちろん大丈夫だよ!」
そこから二人は久しぶりに長電話をした。
美咲は旅行での出来事を楽しそうに語り、優花も心からそれを祝福した。
しかし、旅の話が一段落したところで、美咲の声がふっと変わった。
「……さて。旅行の話はこのへんにして、本題に入ろっか」
「え、本題?」優花は胸が一瞬ざわついた。
「二次会の後ね、恵理と淳子から聞いたんだよ。
『優花と宏樹が二人でずーっと話してた』って。
ねぇ優花、正直に言って。宏樹とどうなってるの?」
美咲の勘の鋭さは昔から変わらない。
優花が五年間抱き続けた想いも、美咲は誰より知っている。
嘘なんてつけるはずがなかった。
優花は静かに息を吸い、正直に打ち明けた。
「実はね……あれから宏樹と、二回、二人で会う約束をしたの」
「ええぇ!? 二回!? マジで!?」
美咲の反応は予想通り大げさだったが、その興奮が優花を緊張から解き放った。
「それって完全にデートじゃん! 何話したの!? 早く教えて!」
笑いながら促され、優花はブーケトスでの出来事、二次会で連絡先を交換したこと、
そして夜景撮影での宏樹の言葉──
仕事の重圧や、「心の平穏」を求めていたことを丁寧に語った。
「……それでね、来週の日曜日も会う約束をしたの。
東京駅の近くで夜景を撮りに行くって。
すごく忙しいのに、時間を作ってくれて……」
美咲はしばらく黙ったまま聞いていたが、
やがて、じんわりと温かい声で言った。
「優花……やっとだね。
五年越しの想いが、ちゃんと動き出したんだよ」
その言葉に、優花の視界が少しだけ滲んだ。
「宏樹が弱音を話したって……あれ、すごいことだよ。
あの宏樹が人に愚痴を言うなんて、めったにないもん。
優花だけ、特別なんだよ。絶対」
胸につかえていた不安が、ふっと溶けていく。
「しかも優花のやり方がほんと上手い。
趣味を一緒に楽しんで、寄り添って……
ただの同窓生じゃないよ。
ちゃんと“デートしてる”じゃん!」
その言葉で、優花の心に灯っていた小さな光が、確かな強さを持った。
「ありがとう、美咲。
私ね、もう昔みたいに遠くから見てるだけじゃなくて……
今の宏樹を支えたいの。
次は、私が彼を“心の平穏”に導いてあげたい」
ヘッドフォンのことはまだ秘密にしておくことにした。
けれど、自分の気持ちはもう「片思い」ではない──
そのことを、美咲への報告で再確認できた。
「優花なら絶対大丈夫! 私、全力で応援するからね!」
電話を切り、鏡の前に立つと、
そこに映る自分の表情は、かつての控えめで不安な顔とは違っていた。
自信と期待に満ちた、恋する女性の顔。
優花はそっと微笑み、
明日の自分へ、美しく前向きな決意を刻んだ。

