華やかなキャンドルサービスが終わり、披露宴はゆっくりと終幕へと向かっていた。
新郎新婦からの感謝の言葉、両家代表の挨拶。
会場に満ちる温かな空気の中で、優花はその一つひとつを静かに受け止めながら、胸の奥で別の鼓動を感じていた。
――次は、二次会。
宏樹と、もっと話せる場所。
期待は、抑えようとしても自然に膨らんでいく。
司会者が「お開きです」と告げると、祝福の拍手が会場いっぱいに広がった。
美咲と健太が満面の笑みで退場していく姿を見送りながら、優花も胸の奥でそっと拍手を送った。
ゲストたちは少しずつ席を離れ、思い思いに出口へと向かい始めていた。
「ねえ、二次会ってどこでやるんだっけ?」
優花が隣の恵理に声を潜めて尋ねると、恵理は目を輝かせて答えた。
「優花、もちろん行くでしょ! ここからちょっと離れたバー貸し切りだって。詳細は健太(友人)がグループチャットに送るって!」
ちょうどそのタイミングで、その健太(友人)が別のテーブルから大声で叫んだ。
「おーい! 二次会は場所もう確保してあるぞー! このまま向かう組はついてきてくれ! 着替えたい人は声かけろよ! 俺は着替えるけど!」
会場のあちこちで笑いが起こり、次のイベントへと空気が滑らかに切り替わる。
優花は恵理たちと共に退場口へ向かった。
その途中で――
視線が自然と宏樹を探していた。
彼は男性友人たちと出口付近で談笑している。
スーツの上着を脱ぎかけ、ネクタイを緩めながら笑っている姿は、披露宴中よりも柔らかい雰囲気を纏っている。
優花が彼の近くを通り過ぎようとした、その瞬間。
「――相沢」
名前を呼ばれ、優花の足が止まった。
宏樹がこちらをまっすぐ見ていた。
先ほどまでの笑顔ではなく、どこか確認するような真剣な眼差しで。
「二次会は、来るよね?」
少し急いたようなその声には、
“行ってほしい”という気持ちが、否応なしに滲んでいた。
優花は、迷いなく頷いた。
「もちろん行きます。美咲たちの幸せ、もっとお祝いしたいですから」
その返答に触れた途端、宏樹の表情がふっと緩んだ。
「そっか。……よかった」
ほんの一瞬見せた安堵が、優花の胸を温かく締めつける。
「俺たちも着替えに行くところなんだ。相沢は?」
「私も少し着替えたいので、駅のロッカーまで行きます」
「了解。じゃあ――会場で合流しよう」
短い言葉。
けれど、そこには“再会の約束”が確かに刻まれていた。
宏樹は友人たちの輪へ戻っていく。
その背中はどこか軽やかで、さっきよりも歩幅が広いように見えた。
優花は胸の奥で静かに拳を握った。
(よし……ここからが勝負)
披露宴で積み重ねた、落ち着いた大人の会話。
それが二次会で、“対等な関係の第一歩”になる。
過去の片思いの延長ではなく、
新しい関係を築けるかもしれない大事な時間。
そう思うと、心が高鳴るという言葉では足りなかった。
優花は恵理たちとともに式場を出て、夜風が流れる街へと足を踏み出した。
二次会までの短い準備時間が――
期待と緊張と、ときめきで、ゆっくりと満たされていく。
新郎新婦からの感謝の言葉、両家代表の挨拶。
会場に満ちる温かな空気の中で、優花はその一つひとつを静かに受け止めながら、胸の奥で別の鼓動を感じていた。
――次は、二次会。
宏樹と、もっと話せる場所。
期待は、抑えようとしても自然に膨らんでいく。
司会者が「お開きです」と告げると、祝福の拍手が会場いっぱいに広がった。
美咲と健太が満面の笑みで退場していく姿を見送りながら、優花も胸の奥でそっと拍手を送った。
ゲストたちは少しずつ席を離れ、思い思いに出口へと向かい始めていた。
「ねえ、二次会ってどこでやるんだっけ?」
優花が隣の恵理に声を潜めて尋ねると、恵理は目を輝かせて答えた。
「優花、もちろん行くでしょ! ここからちょっと離れたバー貸し切りだって。詳細は健太(友人)がグループチャットに送るって!」
ちょうどそのタイミングで、その健太(友人)が別のテーブルから大声で叫んだ。
「おーい! 二次会は場所もう確保してあるぞー! このまま向かう組はついてきてくれ! 着替えたい人は声かけろよ! 俺は着替えるけど!」
会場のあちこちで笑いが起こり、次のイベントへと空気が滑らかに切り替わる。
優花は恵理たちと共に退場口へ向かった。
その途中で――
視線が自然と宏樹を探していた。
彼は男性友人たちと出口付近で談笑している。
スーツの上着を脱ぎかけ、ネクタイを緩めながら笑っている姿は、披露宴中よりも柔らかい雰囲気を纏っている。
優花が彼の近くを通り過ぎようとした、その瞬間。
「――相沢」
名前を呼ばれ、優花の足が止まった。
宏樹がこちらをまっすぐ見ていた。
先ほどまでの笑顔ではなく、どこか確認するような真剣な眼差しで。
「二次会は、来るよね?」
少し急いたようなその声には、
“行ってほしい”という気持ちが、否応なしに滲んでいた。
優花は、迷いなく頷いた。
「もちろん行きます。美咲たちの幸せ、もっとお祝いしたいですから」
その返答に触れた途端、宏樹の表情がふっと緩んだ。
「そっか。……よかった」
ほんの一瞬見せた安堵が、優花の胸を温かく締めつける。
「俺たちも着替えに行くところなんだ。相沢は?」
「私も少し着替えたいので、駅のロッカーまで行きます」
「了解。じゃあ――会場で合流しよう」
短い言葉。
けれど、そこには“再会の約束”が確かに刻まれていた。
宏樹は友人たちの輪へ戻っていく。
その背中はどこか軽やかで、さっきよりも歩幅が広いように見えた。
優花は胸の奥で静かに拳を握った。
(よし……ここからが勝負)
披露宴で積み重ねた、落ち着いた大人の会話。
それが二次会で、“対等な関係の第一歩”になる。
過去の片思いの延長ではなく、
新しい関係を築けるかもしれない大事な時間。
そう思うと、心が高鳴るという言葉では足りなかった。
優花は恵理たちとともに式場を出て、夜風が流れる街へと足を踏み出した。
二次会までの短い準備時間が――
期待と緊張と、ときめきで、ゆっくりと満たされていく。

