ロマンスに、キス




調理実習なんて、久しぶり。
家庭の授業は好きだし、お菓子作りも得意。

でも、家族以外にプレゼントするのは、ほとんど初めてだった。


バレンタインのときも、いいなと思った男の子には、「重い女」って思われたくなくて、手ごろな価格のチョコを、適当に渡すだけだった。


だから、このカップケーキだって、本来なら家族だけでいいはずだった。



「どうする?全部砂糖の量、普通でいく?」


「……ひとつだけ、ビターなの先に作ってもいい?」


「いいよー」



甘いの、あたしも苦手だから。

でも、あいつはきっと、こっちのほうが好きって言ってくれるはず。

食べてくれるかどうかは、わからないけど。



オーブンで綺麗に焼き上げたカップケーキは、トッピングありのかわいいのふたつと、シンプルなのをひとつ。

ラッピングは「適当でいいや」と思ってたけど、自然と慎重になっていた。

形、崩れてほしくない。袋、小さいかもって焦ったけど、ぎゅっと入れたらぴったりだった。


味見する分を残してないことに、後でちょっと失敗したなと思ったけど、まあいいか。

食べるか食べないかは、あいつ次第だし。

でも、食べてほしい気持ちはある。

だって、せっかく作ったんだもん。ラッピングだって、きれいにできたんだから。