「……やっと、理想の人に出会えたと思ったのっ……!優くんは、いつもあたしのこと『かわいい』って言ってくれて。何しても、どんなときも。あたしの“かわいい”を、ちゃんと守ってくれてたの……。でも……でもね、優くんでも、なかったの。だって、優くんはきっと……あたしの本性を知ったら、かわいいって思ってくれなくなるから」
ほんとうに、好きなものも。口が悪いことも。可愛げのない考え方をすることも。
全部、隠してた。
「だから……もう、どうでもいい人に『かわいい』って言われたって、どうでもよくて……かわいいって言われて、心の底から、ほんとにうれしいって思える相手に……出会いたかったのっ……!」
肩が上下して、息が苦しい。
涙が、ぽろぽろ落ちる。
佐野の前では、ちっとも、かわいくない。
天使のあたしで、いられない。
……いや。
天使でいようとしたって、たぶん、すぐに見破られる。
でも。
それで、よかった。
佐野には、天使が通じなくて、よかった。
だって、もし。
もし、天使のあたしだけで、佐野が満足してしまったら。
それって――
ものすごく、悲しい気がするから。
今のあたしは、泣いてて、めんどくさくて、弱くて、全然かわいくない。
それでも。
それでも、このままのあたしを、見てほしいって、思ってしまった。



