「…あたし、物心ついたときから、自分が一番かわいいって思ってて。実際、そう言われて育ってきたから。『あぁ、そうなんだ』って、あたしってかわいいんだなって」
言いながら、佐野の顔を見た。
なにか言われるかも、って思ったけど――
意外にも、佐野は真剣な顔で、パンを口に入れたまま、黙って聞いてくれている。
思わず、泣きそうになった。
「…でも、それって顔だけで。小さいころから女の子が好きなものは、だいたいあたし好みじゃなかったし、家では図鑑ばっかり読んでたし…。ある日ね、男の子の背中に大きな虫がついてて、その子、虫苦手で、すごく泣いてたの。あたし、その子のこと好きだったから、取ってあげたの。助けたら、好きになってくれるかなって思ったんだけど――周りの人が、その子に、ダサい、かっこ悪いって言いだして…あたし、おせっかいだったのかも、余計なことしたのかもって。案の定、その子はみんなの前であたしに、『余計なことすんじゃねーよ!ヒーロー気取りかよ!』って言ってきたんだよね」
へへ、と軽く笑う。
つい、天使の一千華の姿を、佐野に見せてしまった。
でも、笑っている自分に気づくと、また胸が痛む。
佐野は、パンを一口放り込み、なんでもないように「それで?」って言うから。やっぱり、佐野だけには、あたしのことを知ってほしい。
言いたくないけど、言いたいの。
声に出しても、出さなくても、伝えたい。誰にも見せたことのない、あたしの弱さも、全部。
佐野だけには、見てほしい。受け止めてほしい。



