でも、今回は違う。
他人に一切興味のない佐野が、あたしと離れてる間。
映画のあとのこととか、優くんのこととか。
そんなことを、ずっと考えてくれてたんだと思うと、それだけで、十分、嬉しかった。
満足、してしまった。
それに。もう、できるだけ、喧嘩みたいなことは、したくない。
試すみたいに突き放して、不安にさせて、追いかけさせるようなこと、佐野とは、もう、したくなかった。
ゆっくり息を吸って、あたしは、視線を落とす。
それから、ちゃんと顔を上げる。
佐野だったら、あたしの全部、曝け出してもいい。
かわいいだけの部分も。嫌なところも。弱くて、めんどくさいところも。
だって、たぶん。
こいつは、それでも。
あたしのことを、受けとめてくれる。
……受けとめてほしい。
いや。
そうじゃなきゃ、許さない。
一度、深呼吸をする。
話したことがない。誰にも話したことがない、自分の小さなトラウマ。
でも、佐野には知っててほしい。それだけで、少しだけ、楽になれる気がする。



