佐野は、購買で買ってきたパンを食べたいらしい。
だから離れてって言われた。
でも、どうしても離れたくなくて、あたしは、しがみついたまま。
佐野は座って、あたしを抱っこした状態でパンを食べ始める。
「めんどくせーな」って聞こえたけど、それでも、食べながら、背中をぽんぽんと撫でてくれる。
涙はだんだん落ち着いて、呼吸も整ってきた。
でも、佐野から離れるタイミングが、どうしても掴めない。
「俺さ、結構気になってんだよな」
肩越しに聞こえる声。
胸が、ぎゅっとなる。
「……なにを?」
佐野の首に腕を回してるせいで、パンは食べづらそう。
頼むから、一旦離れてって言われてしまって、渋々、離れる。
佐野の隣に座った瞬間。
一気に、寂しい。
でも、視線の先には、モグモグと相変わらず食べっぷりのいい佐野がいる。
「映画の後のあいつとは、どんな関係なのかとか。パンケーキの店の男とか」
佐野は、パンをかじりながら、淡々とそう言った。
じっと、佐野の顔を見つめていると、
「……見てないで、答えろよ」
と、少しだけ不機嫌そうに言われる。
今までだったら、きっと、言いたくない、って思ってた。
あたしが黙れば、もっと聞いてきてよ。もっと欲しがってよ。
そうしたら、もしかしたら、教えてあげてもよかったのに。
……って。
そんなふうに、駆け引きしてきた。



