夢幻に消えた君と、存在しない約束の続きを。



夜が深まるにつれ、病室の景色が歪んで見え始めた。


現実の音が遠のき、水中を歩いているような感覚に襲われる。
自分の足が、床に着いているのかさえ分からない。

ふと窓に映った自分を見ると、そこには幽霊よりも朧げな、消えかけの光の粒子のような少女が立っていた。


「佑介くん⋯⋯私、まだここにいたいよ」


彼がくれた青いマフラーを、首元に手繰り寄せる。

けれど、あの時感じた確かな重みも、ウールのぬくもりも、今はもう感じられない。
私を彩っていたすべての色が、灰色に褪せていく。


ふと、机の上の青い手帳が目に留まった。

私が泣きながら書いたリスト。


佑介くん言ってくれた『全部叶えよう』という力強い想い。


それを読み返そうと手を伸ばしたけれど、私の指は手帳の表紙を虚しくすり抜けた。

物に触れることさえ、もう許されない。


私はただ、彼の意識の残骸に漂うだけの、形のない想いになろうとしていた。


恐怖が、波のように押し寄せる。
私が消えることで、彼の世界からすべての光が失われてしまうことが、何よりも恐ろしかった。


大切な人を守るために、自分ができること。
それを精一杯することが、彼にとって本当に幸せなんだろうか。