冬の光にヴェールは要らない

はぁはぁ、と息を切らしながら海に続く石階段を登っていく。

いつもより階段がキツく感じるのは、走っているからだろうか。
 
海が見え始める。

消えかかっているとはいえ、まだ虹が(かす)かに出ているということは思ったよりも時間が経っていないのかもしれない。

「万桜?」

私の名を呼ぶ声が聞こえる。

壮矢の声だ。
 
虹に向けた視線を(わず)かに落とすだけで、視界に壮矢が入る。

突然息を切らしながら来た私を不思議そうに……そして、心配そうな顔で見ている壮矢。

その表情を見て、何故か心に安心が芽生えたのが分かった。

いや、きっと今は気を逸らしてくれるなら誰の顔を見ても安心が顔を出すのかもしれない。