冬の光にヴェールは要らない

「またねー、万桜お姉ちゃん!」

前と同じように大きく手を振ってくれる拓人くんに私は手を振り返した。

以前は私が拓人くん達が帰るのを見送る側だったのに、今は私が先に海から帰っている。

その事実に少しだけ違和感を感じる。

「お兄ちゃんもちゃんと手を振って!」

拓人くんに(うなが)されて、青年……壮矢も私に軽く手を振ってくれる。

私はそのまま手を振り続けながら、心の中で青年のことを「壮矢」と呼び始めた自分に「これは過剰に踏み込ませたことにならない?」と問いかける。

その問いかけに心の中の諦めた私が「どうせ次に会った時に、苗字呼びだったらまた訂正されるよ」と言い返した。
 
次に会う、という感情が無意識に湧き出た自分に嫌気がさす。

会いたくないと思っているのに、心のどこかで壮矢の強引さから逃げられなかったらどうしようと考えている。

夕日に変わった太陽に照らされながら、私は壮矢との距離感を測りかねていた。