陽が傾き、夕刻になろうとしている。先代当主は参加したゲストへ感謝の言葉を伝え、パーティーは終了した。アデルはパーティー終了まで邸宅内で休んでいた。
ルフェーヌはアデルと一緒に風力車へ乗り、帰路につく。まだ頭痛がするのか、アデルは眉間にシワを寄せて険しい表情をして頭を押さえ、黙って風力車に揺られている。
珍しく風力車内が静かだ。ルフェーヌは辛そうに頭を押さえているアデルに確認したい事があるため、聞いてもいいのか考えながら凝視している。
考え出して数十分。ルフェーヌはアデルへ聞きたい事を質問するために声をかける。
「アデル、聞いてもいい?」
ルフェーヌが控えめにアデルに声をかける。アデルは「なに?」と目線だけルフェーヌの方に向けて答える。
アデルが頭痛がして機嫌が悪そうなのは分かっていたが、ルフェーヌは確かめたい事があった。
「アデルはディエゴ王太子殿下の事が好きなの?」
悪口を言ったり親しくしていると言ったりとアデルの心理が分からない。アデルはハッキリとした物言いで答えた。
「好きなわけないでしょ、あんな無礼な方。でも強国の王太子妃って地位が魅力的よね。……まさか、お姉様も王太子妃の地位を狙っているの?」
ルフェーヌはアデルに鋭い視線で睨まれる。
「わたしは……」
ルフェーヌは小さく呟き、アデルから視線をそらす。すると風力車の窓ガラスにひびが入るような小さい音がしたが、ルフェーヌとアデルはその音に気づかずに話を続ける。
「お姉様がパイロープ国の王太子妃? 冗談はよして。皆が狙っている地位よ。そもそも、お姉様があたくしに勝てる訳がないのだから、諦めた方がいいわよ」
ルフェーヌはアデルに返す言葉がなく、黙り込む。
気の弱いルフェーヌはアデルと張り合う事ができない。本当は自分も華やかなドレスを着てみたいと思っていたが、アデルに「お姉様よりあたくしの方が似合う」と言われ、着られなくなった。
ルフェーヌはアデルの言動により、自尊心と自己肯定感が低くなっていく。アデルから否定的な言動をされたくないため、ルフェーヌはアデルを刺激しないように自然と目立たない行動を取っていった。
幼少期から目立たない色のドレスやデザインなどを選ぶようになった。幼い頃からそうしていたため、ルフェーヌの中ではいつしか当たり前の事になってしまった。
何も言わないルフェーヌを気にせず、アデルは言葉を続ける。
「王太子殿下のあの性格、どうにかならないかしら。強国王太子じゃなかったら、絶対に願い下げだわ」
ガシャン!
突然、風力車の窓ガラスが割れた。破片は車内に入り込み、辺りに破片が散らばる。
「きゃあっ! なに!?」
アデルは驚いて声を上げると風力車が止まる。ルフェーヌも驚き、身体をこわばらせる。
窓ガラスに誰も触っていない、何かが当たって窓ガラスが割れた訳でもないのに割れてしまった。
御者は扉を開けて二人に「お怪我はありませんか?」と声をかける。
「どうなっているのよ。この窓ガラス、触ってもいないのに勝手に割れたわ。安物なんじゃないでしょうね?」
アデルは声を荒げて御者を責める。
「いいえ、そんなことは……。すぐに片付けを致します」
「早くしてちょうだい! こっちは頭痛がひどくて余計に機嫌が悪いのよ!」
アデルは頭を押さえて御者に向かって怒鳴り散らしている。
二人は風力車から出て御者が窓ガラスの破片を片付けが終わるのを待つ。アデルは表情を歪め、苛立ちながら頭痛ががひどい頭を押さえている。
「早く帰って休みたいのに。さっきはティーカップが割れるし、今度は窓ガラス。厄日かしら。……お姉様、あたくしに何かしてないわよね?」
アデルがルフェーヌを睨む。ルフェーヌは黙って首を振って否定する。
「そうよね、お姉様があたくしに刃向かえるわけないものね。魔法も使えなくて何もできないのだから」
魔法には相手を傷つけ呪う魔法も存在する。相手の身体を傷つけたり命や魔法力を奪う魔法など、相手に重大な危害を加える魔法を使うのはスフェーン国やパイロープ国をはじめ、各国で禁止されている。アデルはルフェーヌがその魔法を使ったと疑った。
御者がガラスの破片の片付け終わると二人は風力車に乗り込み、再び走り出す。窓ガラスを塞ぐものがないため、触らないようにと御者に注意される。
アデルは頭が割れそうな強い頭痛に激しく苛立つ。
「お姉様といると本当に不快だわ!」
アデルはルフェーヌを見ずに吐き捨てると、城に着くまで頭を押さえて機嫌悪く眉をつり上げていた。
ルフェーヌはアデルと一緒に風力車へ乗り、帰路につく。まだ頭痛がするのか、アデルは眉間にシワを寄せて険しい表情をして頭を押さえ、黙って風力車に揺られている。
珍しく風力車内が静かだ。ルフェーヌは辛そうに頭を押さえているアデルに確認したい事があるため、聞いてもいいのか考えながら凝視している。
考え出して数十分。ルフェーヌはアデルへ聞きたい事を質問するために声をかける。
「アデル、聞いてもいい?」
ルフェーヌが控えめにアデルに声をかける。アデルは「なに?」と目線だけルフェーヌの方に向けて答える。
アデルが頭痛がして機嫌が悪そうなのは分かっていたが、ルフェーヌは確かめたい事があった。
「アデルはディエゴ王太子殿下の事が好きなの?」
悪口を言ったり親しくしていると言ったりとアデルの心理が分からない。アデルはハッキリとした物言いで答えた。
「好きなわけないでしょ、あんな無礼な方。でも強国の王太子妃って地位が魅力的よね。……まさか、お姉様も王太子妃の地位を狙っているの?」
ルフェーヌはアデルに鋭い視線で睨まれる。
「わたしは……」
ルフェーヌは小さく呟き、アデルから視線をそらす。すると風力車の窓ガラスにひびが入るような小さい音がしたが、ルフェーヌとアデルはその音に気づかずに話を続ける。
「お姉様がパイロープ国の王太子妃? 冗談はよして。皆が狙っている地位よ。そもそも、お姉様があたくしに勝てる訳がないのだから、諦めた方がいいわよ」
ルフェーヌはアデルに返す言葉がなく、黙り込む。
気の弱いルフェーヌはアデルと張り合う事ができない。本当は自分も華やかなドレスを着てみたいと思っていたが、アデルに「お姉様よりあたくしの方が似合う」と言われ、着られなくなった。
ルフェーヌはアデルの言動により、自尊心と自己肯定感が低くなっていく。アデルから否定的な言動をされたくないため、ルフェーヌはアデルを刺激しないように自然と目立たない行動を取っていった。
幼少期から目立たない色のドレスやデザインなどを選ぶようになった。幼い頃からそうしていたため、ルフェーヌの中ではいつしか当たり前の事になってしまった。
何も言わないルフェーヌを気にせず、アデルは言葉を続ける。
「王太子殿下のあの性格、どうにかならないかしら。強国王太子じゃなかったら、絶対に願い下げだわ」
ガシャン!
突然、風力車の窓ガラスが割れた。破片は車内に入り込み、辺りに破片が散らばる。
「きゃあっ! なに!?」
アデルは驚いて声を上げると風力車が止まる。ルフェーヌも驚き、身体をこわばらせる。
窓ガラスに誰も触っていない、何かが当たって窓ガラスが割れた訳でもないのに割れてしまった。
御者は扉を開けて二人に「お怪我はありませんか?」と声をかける。
「どうなっているのよ。この窓ガラス、触ってもいないのに勝手に割れたわ。安物なんじゃないでしょうね?」
アデルは声を荒げて御者を責める。
「いいえ、そんなことは……。すぐに片付けを致します」
「早くしてちょうだい! こっちは頭痛がひどくて余計に機嫌が悪いのよ!」
アデルは頭を押さえて御者に向かって怒鳴り散らしている。
二人は風力車から出て御者が窓ガラスの破片を片付けが終わるのを待つ。アデルは表情を歪め、苛立ちながら頭痛ががひどい頭を押さえている。
「早く帰って休みたいのに。さっきはティーカップが割れるし、今度は窓ガラス。厄日かしら。……お姉様、あたくしに何かしてないわよね?」
アデルがルフェーヌを睨む。ルフェーヌは黙って首を振って否定する。
「そうよね、お姉様があたくしに刃向かえるわけないものね。魔法も使えなくて何もできないのだから」
魔法には相手を傷つけ呪う魔法も存在する。相手の身体を傷つけたり命や魔法力を奪う魔法など、相手に重大な危害を加える魔法を使うのはスフェーン国やパイロープ国をはじめ、各国で禁止されている。アデルはルフェーヌがその魔法を使ったと疑った。
御者がガラスの破片の片付け終わると二人は風力車に乗り込み、再び走り出す。窓ガラスを塞ぐものがないため、触らないようにと御者に注意される。
アデルは頭が割れそうな強い頭痛に激しく苛立つ。
「お姉様といると本当に不快だわ!」
アデルはルフェーヌを見ずに吐き捨てると、城に着くまで頭を押さえて機嫌悪く眉をつり上げていた。

