妹に虐げられて魔法が使えない無能王女は、政略結婚でお飾り王太子妃になるはずなのに俺様王太子に溺愛されています

 ルフェーヌがパイロープ国へ嫁いで三ヶ月が経った。
 スフェーンの国を照らしていた強い日差しは落ち着いていき、湿った風は乾いた風に変わっていた。

 アデルは王城にある豪華な調度品を揃えた煌びやかな自室でルフェーヌが嫁いだ炎の国、パイロープ国から届いた広報紙を紅茶を飲みながら目を通している。
 ティーカップをソーサーに戻すと、視界に風の国、スフェーン国の広報紙が目に入る。アデルは気にせず視線をパイロープ国の広報紙に戻す。
 パイロープ国の広報にはルフェーヌとディエゴが孤児院へ公務に言った時の事が載っている。
 アデルはルフェーヌとディエゴが仲良く写っている広報紙の写真が二人の未来を見せているように見える。
 アデルは自分がルフェーヌへお飾り王太子妃を勧めたが、ルフェーヌが”強国の王太子”との婚約に納得がいかない。二人の仲良さそうな広報紙を見ていると苛立ってしまう。
 アデルが苛立つ原因はもう一つあった。
 ルフェーヌが強国のディエゴと婚約すると「パイロープ国の王太子に見初められたプリンセス」として注目度が高くなった。
 パイロープ国の王太子、ディエゴはスフェーン国の国民にも人気がある。ディエゴは強国の王太子として有望視され、その実力は父王を凌ぐと噂されている。ディエゴは容姿にも恵まれ、特に女性人気の高い王太子だ。
 アデルは惜しい事をしたと後悔するが、お飾り王太子妃という条件が受け入れられず即答でルフェーヌへ勧めてしまった。
 譲らなければ自分が王太子妃になっていたはずだったと思うと、さらに苛立ちが激しくなる。
 今は姉妹の人気は逆転し、すっかりアデルはかすんでしまった。
 アデルはパイロープ国の広報紙を握りつぶす。
 「なによ、何もできないくせに。王太子と婚約しただけじゃない」
 アデルは自分より注目されているルフェーヌが面白くない。むかつく。アデルは自分勝手にルフェーヌを妬んで苛立っている。
 アデルの視界に広報紙を握り潰している自身の拳が目に入る。
 「やあね。こんな事で機嫌を損ねるなんて、あたくしらしくないわ。相手はお姉様なのよ。あたくしに敵うわけないわ」
 アデルは広報紙を握り潰している拳を緩めると、メイドを呼んでペンと便箋を用意させてルフェーヌへ手紙を書いた。
 「あたくしったら、なんて姉思いの妹なのでしょう」
 アデルは蝋印で封をして、再びメイドを呼び手紙をルフェーヌの元へ送らせた。