妹に虐げられて魔法が使えない無能王女は、政略結婚でお飾り王太子妃になるはずなのに俺様王太子に溺愛されています

 ルフェーヌたちは式典会場となっている、どこの国の国土にもなっていない土地、アルカイオスへやってきた。
 この土地は山、川、森など手つかずの自然がそのまま残っている。
 広大な自然が残るこの土地には希少な動植物が多く生息している。中には珍しい動植物が生息しているため、アルカイオスを荒らす者は厳しい処罰を科せられる。
 この土地はスフェーン国など各国に隣接しているため、各国の国境付近はその国の警備隊が警備している。そのため特別な許可がないと入る事ができない土地になっている。
 ルフェーヌたちは自国スフェーン国の国境からアルカイオスへ入る。森をしばらく走ると開けた場所に出る。何十メートルもある原生林が自生している。茶色の幹と生い茂る緑の葉がの景色が広がっている。
 そこには何台もの馬車が止まっている。ルフェーヌたちの風力車も整然と駐車する。
 御者が風力車の扉を開ける。アデルが先に降り、続いてルフェーヌが降りる。
 「やっと着いたわ」
 「あとで怒られても知らないわよ」
 「お父様があたくしを怒るわけないじゃない」
 風力車を降りると前乗りしている王室広報部がアデルとルフェーヌの写真を撮る。
 「アデル様、もう一枚写真をお願いいたします」
 「一枚と言わず、たくさん撮ってね。あたくしばかり撮るのではなく、お姉様もいらっしゃるから入れてあげてね」
 アデルはルフェーヌと違い、人気の王女だ。華やかな美しさと社交術に長けているアデルは女性たちの憧れだ。
 アデルは表向きではルフェーヌと”仲良し姉妹”を演じている。その方が自身のイメージに良いからだと言う。
 アデルが広報部に写真を撮られていると、父のジスランが乗った風力車が式典会場に着いて停車した。
 御者が風力車の扉を開くと、ジスランが降りるとアデルとルフェーヌへ先程法定風速違反で華麗に抜き去った事の注意をする。
 「先程の風速はなんだい? あんなに飛ばしては危ないだろう。法定風速違反じゃないか」
 「御者のせいじゃないわ。お姉様が退屈そうだったから、はやく会場へ着かせたかったの」
 アデルはルフェーヌと一緒にいる時よりも高い声で可愛らしくジスランへ媚びる。
 「アデル、お前が姉思いで優しいのは分かっているよ。だが風速を出しすぎて万が一の事故でアデルが怪我をするのが心配なのだよ。分かってくれるね」
 「は~い、気をつけますわ」
 ルフェーヌが生まれた時から見慣れすぎたやりとりだ。それを見てもルフェーヌは表情ひとつ変えずに何とも思わない。
 ルフェーヌとアデルは舗装されてはいない、なだらかな道を歩いて式典会場へ向かう。
 「相変わらずの大自然ね。自分の国で見飽きてるのよね。行くわよ、お姉様」
 そう言うとアデルはジスランと話しながら歩き、ルフェーヌはその後ろを歩いている。