舞踏場は一層華やかで煌びやかだった。ルフェーヌの母国であるスフェーン国にも舞踏場はあるが、ここまで華やかで煌びやかではない。ルフェーヌは別世界にいるようだった。
何百人もの招待客がディエゴとルフェーヌを見ている。こんな大勢に注目される事に慣れていないルフェーヌは緊張してディエゴへ添えている手に力が入る。
舞踏場中央でディエゴの婚約者として紹介される。ルフェーヌはドレスの裾を持って深々とお辞儀をすると、一斉に拍手をされてディエゴの婚約者として認められる。
夫人たちから「素敵な方ね」「お美しいわ」と声が上がる。ルフェーヌの耳に届き、照れたよう表情を少し緩める。
ワルツが演奏され始め、最初にルフェーヌとディエゴがダンスを踊る。
ディエゴがルフェーヌの前に跪くと、ルフェーヌはその手を取り踊り出す。二人は予定通り、華麗なダンスを招待客に披露して魅了した。
ルフェーヌの紹介が終わり、歓談の時間となった。ルフェーヌとディエゴは社交の場を外れ、人が少ない場所へやってきた。
「緊張しました」
ルフェーヌはパーティーの準備をしながら、ジョゼにパーティーで行う事を聞いていた。ルフェーヌは男性とダンスを踊るのも数えるほどしかなかったため、上手くできた事に安堵する。
「上出来だ。ダンス上手いんだな」
ディエゴは感心したようにルフェーヌを褒める。
「ありがとうございます。普段はあまり踊る事はないのですが、練習はしていました。でもわたしが踊れなかったらどうするつもりだったのですか?」
「俺が無理矢理に踊らせる」
ルフェーヌはそれを聞いた瞬間、思考が止まった。ルフェーヌはディエゴに聞き返すとその方法を教えてくれた。
ディエゴは炎の国、パイロープ国の王太子で、炎属性だ。ディエゴの話によると、ろうそくのような小さい炎で相手のステップを矯正して踊らせるらしい。
ルフェーヌは「火傷はしないのでしょうか?」と質問すると、ディエゴは「俺は燃やしたいものだけ燃やせる」と返した。
ルフェーヌはそんな器用な事ができるのかと感心するのと同時に、無理矢理踊らせるという事をするディエゴに言葉を失う。
「…………」
ルフェーヌはできるだけ表情を変えないように努める。自分はお飾りでもディエゴとやっていけるのだろうかと不安になる。
ルフェーヌの不安はディエゴには伝わっていないようで、次の行動を指示する。
「これから挨拶をしに行く。お前は招待客を把握していないだろうから、黙っていてくれたらいい」
「わかりました」
ルフェーヌは返事を返し、黙っている事を心に決める。
ルフェーヌはディエゴから言われた通り、挨拶の時以外は黙っていた。
挨拶をしながらディエゴと招待客の話を聞いていると、ディエゴがルフェーヌに一目惚れをした事になっている。公には政略結婚と言いづらいのだろうか。
ルフェーヌはなぜ一目惚れになっているのかディエゴへたずねたいが、挨拶をする招待客が多いため聞くタイミングがない。
招待客との挨拶も一旦途切れて聞くタイミングかと思ったが、話し出すタイミングをディエゴに先を越されてしまう。
「もう一曲踊るぞ」
「え?」
ルフェーヌはディエゴに突拍子もなくダンスに誘われる。気づくと周りの招待客の男女はワルツに合わせて踊っている。
「ダンス、上手いんだろ?」
ルフェーヌが答えに困っているとディエゴはその理由を勝手に解釈する。
「ああ、アレだろ。俺にアレをやってほしいんだろ。礼儀だしな」
ディエゴはルフェーヌの前で片膝をついて跪き、手を差し出す。ルフェーヌはディエゴの慣れた所作に目を奪われる。
「麗しき私の婚約者。私とダンスを踊ってくださいませんか?」
「はい」
ルフェーヌは何も考えずディエゴの手を取り、踊り出す。
ルフェーヌは踊りながら初夜で自分に迫って来たディエゴの事を思い出す。
色香を含んだあの声を思い出すだけで、ルフェーヌは再び鼓動を弾ませる。
怖いと思いながらも、どうしてディエゴに惹かれてしまうのだろう。
ルフェーヌはディエゴにリードされながら、軽やかなステップで優雅に踊る。
考えながら踊っていると、ディエゴと目が合って鼓動が弾む。
「俺の婚約者に相応しいと、皆がお前を見ているぞ」
ディエゴ越しに踊っていない招待客を見ると、こちらを見ているようだ。ルフェーヌは先程のダンスのように注目されていると思うだけで照れてくる。
「嬉しいお言葉ですが、照れます」
注目される事に慣れていないルフェーヌは顔を伏せる。
「ならばもっと照れさせてやる」
ディエゴはダンスをしながら、ルフェーヌの耳元に顔を寄せる。さらに二人の距離が近くなる。
「俺の婚約者のルフェーヌがこの会場、この世界の誰よりも美しい」
ルフェーヌは握っているディエゴの手に力を込める。顔が一気に真っ赤になったのを感じる。顔を上げれば真っ赤になった事に気づかれてしまう。ルフェーヌは気づかれるのが恥ずかしいので顔を伏せたまま踊る。
握る手を強める以外の反応をしないルフェーヌを見て、ディエゴはからかうような意地悪そうな笑みを浮かべる。
「照れて思考停止か? 俺の勝ちだな」
「からかったのですか?」
ルフェーヌはこれは勝負だったのかと疑問に思うが、からかわれたと思い不満げな声をもらす。
「それはお前が一番よく分かるだろう」
ディエゴの優しげな笑顔と声がたずねる事を制止させる。
つられてルフェーヌも笑顔になる。ルフェーヌはこの笑顔を見ていると心があたたかくなっていく。ずっとその笑顔を見ていたいと思う気持ちはーー。
(わたしの思い過ごしよね?)
ルフェーヌはディエゴとダンスを踊りながら自問自答をする。
あの時、初夜で感じた鼓動。ディエゴの妖艶な色香に酔わされるような刺激が強い鼓動。
いま感じている、ダンスの鼓動。ルフェーヌの余計な思考を制止させる、ディエゴの優しげな笑顔にほだされるような穏やかな鼓動。
ルフェーヌはこれらの鼓動を思い過ごしとして感情の蓋を固く閉め、見過ごすことにした。
これは政略結婚。
それ以上もそれ以下もない。
ルフェーヌはディエゴのそばにいればいいだけの、お飾りでしかない存在を強く意識しようとしている。
何百人もの招待客がディエゴとルフェーヌを見ている。こんな大勢に注目される事に慣れていないルフェーヌは緊張してディエゴへ添えている手に力が入る。
舞踏場中央でディエゴの婚約者として紹介される。ルフェーヌはドレスの裾を持って深々とお辞儀をすると、一斉に拍手をされてディエゴの婚約者として認められる。
夫人たちから「素敵な方ね」「お美しいわ」と声が上がる。ルフェーヌの耳に届き、照れたよう表情を少し緩める。
ワルツが演奏され始め、最初にルフェーヌとディエゴがダンスを踊る。
ディエゴがルフェーヌの前に跪くと、ルフェーヌはその手を取り踊り出す。二人は予定通り、華麗なダンスを招待客に披露して魅了した。
ルフェーヌの紹介が終わり、歓談の時間となった。ルフェーヌとディエゴは社交の場を外れ、人が少ない場所へやってきた。
「緊張しました」
ルフェーヌはパーティーの準備をしながら、ジョゼにパーティーで行う事を聞いていた。ルフェーヌは男性とダンスを踊るのも数えるほどしかなかったため、上手くできた事に安堵する。
「上出来だ。ダンス上手いんだな」
ディエゴは感心したようにルフェーヌを褒める。
「ありがとうございます。普段はあまり踊る事はないのですが、練習はしていました。でもわたしが踊れなかったらどうするつもりだったのですか?」
「俺が無理矢理に踊らせる」
ルフェーヌはそれを聞いた瞬間、思考が止まった。ルフェーヌはディエゴに聞き返すとその方法を教えてくれた。
ディエゴは炎の国、パイロープ国の王太子で、炎属性だ。ディエゴの話によると、ろうそくのような小さい炎で相手のステップを矯正して踊らせるらしい。
ルフェーヌは「火傷はしないのでしょうか?」と質問すると、ディエゴは「俺は燃やしたいものだけ燃やせる」と返した。
ルフェーヌはそんな器用な事ができるのかと感心するのと同時に、無理矢理踊らせるという事をするディエゴに言葉を失う。
「…………」
ルフェーヌはできるだけ表情を変えないように努める。自分はお飾りでもディエゴとやっていけるのだろうかと不安になる。
ルフェーヌの不安はディエゴには伝わっていないようで、次の行動を指示する。
「これから挨拶をしに行く。お前は招待客を把握していないだろうから、黙っていてくれたらいい」
「わかりました」
ルフェーヌは返事を返し、黙っている事を心に決める。
ルフェーヌはディエゴから言われた通り、挨拶の時以外は黙っていた。
挨拶をしながらディエゴと招待客の話を聞いていると、ディエゴがルフェーヌに一目惚れをした事になっている。公には政略結婚と言いづらいのだろうか。
ルフェーヌはなぜ一目惚れになっているのかディエゴへたずねたいが、挨拶をする招待客が多いため聞くタイミングがない。
招待客との挨拶も一旦途切れて聞くタイミングかと思ったが、話し出すタイミングをディエゴに先を越されてしまう。
「もう一曲踊るぞ」
「え?」
ルフェーヌはディエゴに突拍子もなくダンスに誘われる。気づくと周りの招待客の男女はワルツに合わせて踊っている。
「ダンス、上手いんだろ?」
ルフェーヌが答えに困っているとディエゴはその理由を勝手に解釈する。
「ああ、アレだろ。俺にアレをやってほしいんだろ。礼儀だしな」
ディエゴはルフェーヌの前で片膝をついて跪き、手を差し出す。ルフェーヌはディエゴの慣れた所作に目を奪われる。
「麗しき私の婚約者。私とダンスを踊ってくださいませんか?」
「はい」
ルフェーヌは何も考えずディエゴの手を取り、踊り出す。
ルフェーヌは踊りながら初夜で自分に迫って来たディエゴの事を思い出す。
色香を含んだあの声を思い出すだけで、ルフェーヌは再び鼓動を弾ませる。
怖いと思いながらも、どうしてディエゴに惹かれてしまうのだろう。
ルフェーヌはディエゴにリードされながら、軽やかなステップで優雅に踊る。
考えながら踊っていると、ディエゴと目が合って鼓動が弾む。
「俺の婚約者に相応しいと、皆がお前を見ているぞ」
ディエゴ越しに踊っていない招待客を見ると、こちらを見ているようだ。ルフェーヌは先程のダンスのように注目されていると思うだけで照れてくる。
「嬉しいお言葉ですが、照れます」
注目される事に慣れていないルフェーヌは顔を伏せる。
「ならばもっと照れさせてやる」
ディエゴはダンスをしながら、ルフェーヌの耳元に顔を寄せる。さらに二人の距離が近くなる。
「俺の婚約者のルフェーヌがこの会場、この世界の誰よりも美しい」
ルフェーヌは握っているディエゴの手に力を込める。顔が一気に真っ赤になったのを感じる。顔を上げれば真っ赤になった事に気づかれてしまう。ルフェーヌは気づかれるのが恥ずかしいので顔を伏せたまま踊る。
握る手を強める以外の反応をしないルフェーヌを見て、ディエゴはからかうような意地悪そうな笑みを浮かべる。
「照れて思考停止か? 俺の勝ちだな」
「からかったのですか?」
ルフェーヌはこれは勝負だったのかと疑問に思うが、からかわれたと思い不満げな声をもらす。
「それはお前が一番よく分かるだろう」
ディエゴの優しげな笑顔と声がたずねる事を制止させる。
つられてルフェーヌも笑顔になる。ルフェーヌはこの笑顔を見ていると心があたたかくなっていく。ずっとその笑顔を見ていたいと思う気持ちはーー。
(わたしの思い過ごしよね?)
ルフェーヌはディエゴとダンスを踊りながら自問自答をする。
あの時、初夜で感じた鼓動。ディエゴの妖艶な色香に酔わされるような刺激が強い鼓動。
いま感じている、ダンスの鼓動。ルフェーヌの余計な思考を制止させる、ディエゴの優しげな笑顔にほだされるような穏やかな鼓動。
ルフェーヌはこれらの鼓動を思い過ごしとして感情の蓋を固く閉め、見過ごすことにした。
これは政略結婚。
それ以上もそれ以下もない。
ルフェーヌはディエゴのそばにいればいいだけの、お飾りでしかない存在を強く意識しようとしている。

