妹に虐げられて魔法が使えない無能王女は、政略結婚でお飾り王太子妃になるはずなのに俺様王太子に溺愛されています

 ルフェーヌは深夜近くにやっと部屋へ戻ってきた。部屋は真っ暗で冷たかった。
 「はあ……」
 ルフェーヌは明かりを付けずにベッドの上に座り、ため息を吐く。
 ルフェーヌが政略結婚を承諾した瞬間から手続きや準備で慌ただしくなった。
 婚約が決まったというのにルフェーヌの表情は暗く淀んでいる。こんな事でしか人の役に立てない自分が嫌いでしょうがない。
 明かりも付けず、暗黒のような真っ暗な部屋にかすかな月明かりだけが窓際を照らしている。

 無音の部屋なのに、実際に聞こえているようにあの言葉がルフェーヌを苦しめる。
 無能という言葉が頭の中で響いている。家族、王室職員や国民の誰からも面と向かって無能と言われているようで、耳を塞ぐ。
 婚約者となったディエゴ。
 ルフェーヌはディエゴがどうしてこのような事をしたのか理解できない。あらかじめ政略結婚する予定だったから、式典であのように言ってきたのだろうか。
 ルフェーヌはディエゴに握ってもらった手を見つめる。あの安心するようなあたたかさは何だったのだろうか。
 ルフェーヌはディエゴにも否定されたような気がして感情がこみ上げてくる。
 「……っ!」
 ルフェーヌは暗く静寂な部屋で声を殺して嗚咽した。