転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜

 翌朝、ぐっすりと眠ったセレスティアは、元気いっぱいに目を覚ました。

(よし! 今日こそ、いい案を考えるぞっ!)

 そんな意気込みを胸に、ポーラに手伝ってもらいながらテキパキと身支度を整え、朝食の席へと向かう。
 腹が減っていては何事もうまくはいかない。頭を働かせるためには、まずは空腹を満たさないと。

 ダイニングルームに入ると、純白のクロスが敷かれた縦長の晩餐(ばんさん)テーブルが目に入る。
 一番奥の席に腰を下ろせば、すぐさま給仕の使用人が朝食を運んできた。

 昼食や夕食が前菜、スープ、メインと続くコース料理で提供されるのに対し、朝食は手軽に食べられるワンプレートである。

 真っ白な大皿の上には、とろりとした半熟の目玉焼きと、薄くスライスしてカリカリに焼き上げた塩漬け豚肉(ベーコン)
 付け合わせは、春が旬のルッコラやマーシュなどの葉野菜のサラダ。
 白いふわふわのパンの横には苺のジャムが添えてある。

 今日も今日とて、前世では考えられないほど豪勢な食事だ。
 味はとても美味しいし、盛り付けも美しい。
 まさに完璧な朝食、なのだけれど──。

(なんだか、ちょっと……味気ないんだよね)

 静かなダイニングルームに、食器が擦れる小さな音だけが響き渡る。

 セレスティアはいつも食事はひとりで取っている。
 もちろんそばにはポーラがおり、給仕の使用人なども控えてはいるが、身分が違うため彼らが同じテーブルにつくことはない。

 他愛のない会話を交わしながら、「美味しいね」と笑い合っていた前世の食卓が、ふと懐かしく思い出された。


 あの頃のご馳走は、村の男衆が狩ってきた鹿や(イノシシ)、熊などの野生の獣だった。
 大猟の日は、集落の中央にある広場で()き木に火をくべ、村人全員がそこに集まったものだ。

 女衆が捕ってきた川魚には串を打ち、火のそばの地面に突き立ててじっくりと焼いていく。
 メインとなる獣肉は塊のまま豪快に焚き火の上に吊るし、時間をかけて中まで火を通した。
 余った骨や肉の欠片は大鍋に放り込み、野菜やキノコ、山菜、臭み消しのハーブとともに煮込めば、森の恵みたっぷりの山肉鍋のできあがり。
 
 どの料理も時間がかかるため、酒を()み交わしていた大人たち──特に男衆は、完成する頃にはすっかり酔っ払ってしまっていたものだ。
 
 一方の子供たちはご馳走を前にニコニコと上機嫌。
 時に肉や魚を譲り合い、時に奪い合って喧嘩しながら、わいわいガヤガヤとはしゃいでいた。

(楽しかったなぁ……)

 前世の記憶は至るところがおぼろげで、まるで虫食いにあったみたいに穴もたくさん空いている。
 けれども、村のみんなで食べたご馳走の味や心温まる雰囲気は、確かに覚えていた。

(そういえば、いつも意地悪してくるあの子とも、大猟の日に少し仲よくなれたんだっけ)