「まだ怪我痛い?」
「あー?まぁ痛いには痛いけど、お前に心配される程ヤワじゃねーよ」
「流石世那様ですな」
そう軽口を叩きながら鞄から世那の分の弁当を差し出す。
「は、なに?お前まさか俺の分の弁当作ったの?」
「そうなんだよ。つい、いつもの癖で…」
「見上げた下僕根性だな」
「まーたそういうこと言う…」
作ってわざわざ持ってきてやったと言うのに、相変わらず態度がデカい。
ただ、食べる気ではあるのか大人しく私の弁当を受け取ってくれた。
「じゃ、私はここら辺で」
「なに言ってんだよ、ここまで来たんだから上がってけよ」
「えー……なにも持ってきてないよ?」
「良いんだよ、どうせあの女は家に居ないんだから」
あの女。
世那が言うあの女とは、世那のお母さんの事だ。
世那の母親なだけあって凄く若くて綺麗な人だけど、家に居ることが少ない。
だから私は世那と子供の時からの付き合いなのに、世那のお母さんとは両手で数えれるぐらいしか会ったことないんだ。
「んー、じゃあちょっとだけ上がってこうかな…」
「そーしろよ」
「そーさせて頂きます」
そう返事をすると、世那は少しだけ嬉しそうに目を細めた。
世那は傍若無人で我儘で自己中だけど、基本的には素直で寂しがり屋だ。
『"あんなこと"したんだもん』
桜木先輩の言葉が頭の端にあるのを感じながら、私は部屋の中に入って行った。


