私が、世那を強く止めなかったから。
世那があんな噂を真に受けて、西宮先生にこんな思いをさせるぐらいならしっかり釘を刺しておくべきだったんだ。
(でも、私は止めてた)
何回も止めてたのに、それでも琥珀君に執着してたのは世那だ。
世那が悪い。
そう思っているのに、手が震えて止まらなかった。
「早く!教えてよー!」
「西宮先生〜!これは"民意"だよー!」
「言わないならあの噂本当って事になっちゃうじゃん!やばー!」
「早く!早く!」
「せんせー!」
「先生!」
バンッ!!!!
突然の大きな音に、先程まで捲し立てていた生徒達は一斉に静かになる。
西宮先生が教卓に教材を叩きつけた音だ。
シーン、と静まり返った教室の中で西宮先生に一斉に視線が注がれる。
手をわなわなと震えさせ、俯いていた西宮先生はバッと教室の扉へ駆け出し、そのまま教室から出て行ってしまった。
他の皆は唖然とした様子で教室の扉をしばらく見ていると、ヒソヒソと西宮先生について話し始めた。
喉がカラカラに乾いているのに、身体中から汗が噴き出すような、そんな変な感覚だ。
「ありゃりゃ、泣いちゃったかな」
この騒ぎの元凶である世那は、退屈そうに西宮先生が出て行った扉を見つめるだけだった。


