『夕香里』
聞き馴染んだ彼の声が、私の耳の奥を通り抜ける。
『あんな奴の言うこと、本気にするなよ』
「……」
『あんなの全部デタラメだから。昨日は動揺しただけだよ』
「……」
『お前が一番分かってるだろ?ずっとお前を守ってきたのは俺だって。だから、そんな俺がお前を傷付ける訳ないだろ?』
「……」
『それに、あんなの所詮昔のことじゃん。気にすることないのに』
「……」
『……なんとか、言えよ』
「……」
『アレだけのせいで、俺のこと、そんなに嫌いになったかよ』
……
「うん」
静かに、ハッキリと応えると、向こうからは何も聞こえなくなる。
『…………』
「……」
『そんなこと、言うなよ』
聞こえてくる声色だけで、彼がどんな顔をしているのか想像出来てしまう自分に嫌気がさした。



