気まぐれ王子と召使い


「私が、辛い思いをしてるのを見て笑ってたの?どうして、なんで……っ」


「違う、お前のためにっ、」


「なにが私のためなの!?いじめを受けて一人ぼっちにさせて、それで死んでも良いって、そう思ってたんでしょ……?」


「俺が…っ!お前には俺がいるだろ!?他の奴なんて要らない!お前には俺だけで良かったんだ!!」


「そんなわけない!!世那がいたせいで、私の人生めちゃくちゃになったのに…っ…私は!世那に縛られない生き方をしたかったのに!!」



募り募った負の感情がドロドロと心の蓋から溢れ出るようだった。



「もっと友達も増やしたかったし、もっと恋愛をしたかった!色んな事をして色んな事を学びたかったのに、世那は私から全て奪っていったじゃん!!それでも、それでも世那は私を大事にしてくれてると、思ってたのに……っ」



雫が頬を伝う。
桜木先輩は私達の様子を楽しそうにただ眺めている。

世那は泣きそうな、苦しそうな顔で私に手を伸ばしてくる。


「夕香里……っ、なんで…なんで、俺の気持ちを分かってくれないんだよ…こんなにも、お前を大事にしてるのに……」


「……触らないで!!」



私の腕を掴もうとする世那を思い切り振り払う。

振り払われた手を信じられないような目で見つめ、何度も、夕香里、と私の名前を呼んだ。



「行かないでくれ、夕香里。俺を捨てないで、」



静かに涙を零し縋るように言葉を紡ぐ世那。
そんな彼を拒絶するように、一刻も早く彼の傍から離れたくて、後ろを振り返らずに走り去った。