そう先輩が声を発した瞬間、世那は燃え滾るように怒りを宿した瞳で先輩を睨み付け、勢いよく腕を振り払った。
「きゃっ!」と小さく悲鳴をあげて地べたに倒れ込む先輩に、慌てて世那の腕を掴む。
「せ、世那!暴力はダメだって!」
「殴られなかっただけマシだろ、クソ女」
吐き捨てるように言う世那に心臓がバクバクと早くなる。
ここまで女子に攻撃的な世那は見た事ない。
確かに桜木先輩の言動は正気とは思えなかったけど、それにしたって非力な女の子にするには些か乱暴過ぎると思う。
世那は私の制止などお構い無しに先輩の方につかつかと歩み寄ると、先輩の顎を掴み無理矢理目線を合わせた。
「ひっ…!」
恐怖から短い悲鳴をあげる桜木先輩に焦燥感が高まっていく。
「世那!やめなって!!」
「お前は黙っとけ。…良いか、二度と俺達の前に姿見せんじゃねぇよ。次会った時はこんなもんじゃ済まさねぇからな」
底冷えするほどの冷たい瞳が桜木先輩の大きな瞳を射抜いた。
先輩は怯えたように世那を見詰め、恐怖で何も言えないのか、黙って身体を震わせている。
桜木先輩を可哀想だとは思わない。
あれだけしつこくされたら、それ相応の事をされる危険があるということは分かる事だ。
それよりも、世那の纏う空気感の方が恐ろしい。
人を人とも思わないような視線に、冷酷な言動。
いずれ飽きられたら私もこんな風にされるんじゃないかって想像したら、怖くて怖くてたまらなかった。
もう一度震えながら世那の腕を引っ張ると、今度はスッと彼女から離れた。
そして、私の手を握ると、世那は彼女を振り返ることもなく前に歩き始めた。
放心したように地面に座り込む桜木先輩に、私は何も言葉をかけることは出来なかった。


