気まぐれ王子と召使い




「触らないで!!」




学校に登校中、うつらうつらとしながら歩いていた頃、突然パシンっと、空を切る音が聞こえた。

不穏な雰囲気に周りの生徒達はザワザワとしている。
かくいう私もその一人で、何事かと争いの発信源と思わしき二人の男女を見る。


(うわっ!早崎と桜木先輩だ!!)


朝の眠気なんて一気に吹っ飛び、ギョッとした様子でことの成り行きを伺ってみる。


早崎は振り払われた手を信じられないような目で見つめ、悲痛そうな顔をしている。



「なんで……先輩、俺はただ先輩を!」


「もうやめて!お願い、私が悪いの……っ、だから、もう私に関わらないで……」



桜木先輩は美しく整った顔を歪ませ、涙を溢れさせている。
まさに修羅場としか言いようのない雰囲気に、周囲の人間は腫れ物を扱うようにチラチラと横目で見ている。




「ねー、あれなに?」


呆然とその光景を見ていると、不意に横から声をかけられる。
片眉を上げて怪訝そうな目で二人を見つめるのは水瀬ちゃんだ。


「あ、水瀬ちゃんおはよう」


「おはー。で、なによあれ」


「私もさっき見たばっかりだから全然分からないけど……多分、修羅場だね……」


「早崎と桜木先輩でしょ?ついに別れ話?ウケる」


水瀬ちゃんは他人事のように笑うと、「真堂が好きそうなネタ発見〜」と上機嫌で私の横を通り過ぎて行った。


チラリと早崎の方を見ると、焦燥しきったように唇を震わせ、走ってこの場を去って行く桜木先輩をジッと見つめていた。