きみの春に、溶けていく

「朔……また忘れてた。ごめんね」

「いいんだよ。思い出せてよかった」

「……あれ、お兄さん。誰?」

「灯……っ」

もう記憶が……無くなってしまいそう。
一欠片も、真っ暗な月になったのがわたし自身だったら誰が照らしてくれるの?


なにかを決意したように男の人が近づいてくる。

「大丈夫、灯、口を開けて」

お兄さんが言った通り、口を開けると、薬と水を飲まさせられた。

ーーすると、頭の中が一瞬で真っ白になった。
静かで雪のように……

「私は……なに? あなたは誰?」

「君は灯。もう何も怖いことはない。僕は朔。君と一緒にいて、君を助けるよ」

「朔さん、ここはお墓?」

「うん。君はね、いま薬を飲んで昨日より前のことを思い出せなくなったんだ。それでここは君の両親のお墓。残念ながら君が3歳の時交通事故で」

「そう……」

まるで他人のように思える。
両親のことも目の前にいる男の人のことも。