きみの春に、溶けていく

お母さん、ごめんね。
最後まで強がらせてしまって。
私が守ってあげられなくて。

お母さんだって、怖かったよね。
すごくすごくつらかったよね?

お母さんの膝に乗って遊んでいる。
3歳の頃の話。

「ねぇ、なんでままはぱぱとけっこんしたの?」

「え〜突然なに?」

「ぱぱがかっこいいから?」

「ううん、パパはね、確かにかっこいいよ。パイロットで皆の命を背負ってて、お母さんお父さんのかっこいいところ大好き。でもね、ほんとはちがうの」

「ちがう?」

「うん、ままはね。パパの弱いところを守ってあげたいって思ったの。本当は人と関わるのが少し苦手なところとか、照れると無言になっちゃうとことか、だから結婚してとか大好きとかプロポーズの言葉は私から言ったところとかね」

「ふふっ。ぱぱって、へんだね。すきって言えないの?」

「いつか、灯にもわかる日が来るのね。誰かに出会って、その人の弱さが自分だけには見えて、守りたいって思える日が」

お母さんは懐かしそうに笑ってた。
私も今なら分かるよ。

薄くなってしまった記憶でも残った欠片。

「僕は宇宙飛行士になりたい」

そう言った、朔の横顔を守りたいと決めたこと。
私だけのものにしたいと願ったこと。

これが愛しさ。
両親から受け継いだ止まらない願い。

この記憶さえ、また泡沫のように消えていってしまうけれど。