きみの春に、溶けていく

夏休みが終わり秋になった。

ROOTSはテレビでも街でも大人気になり、”第2のbihuka”として、まいにち大忙しだった。

「新曲、今度の学祭で披露するんでしょ」

「あぁ、bihukaさんからも昨日メール来たな。学祭はこっちにもどるとしても、最近はもう東京にいる時間のが長いし、少し早いけど、施設出て向こうに住むか?高校の卒業とか 色々手続きは事務所の人がやってくれるらしい」

「え……!? それって二人で?」

「まぁ、それぞれの部屋があれば僕はいいと思ってるけど、灯は困るか?」

いやいや、世の中ではそれを同棲というような……
もしかして、気のせい???

「気のせいではないな」

「え、今の聞こえてた?!」

「あぁ。でも記憶のこともあるし、灯になにかあった時そばで守ってやれる存在でいたいんだ」

「う、うん。少しだけ考えてみるけど、私ももうここに暮らすのは難しいかなって思ってた。歌手ってどこでいつ誰に見られてるか分からないから。記憶のことを悪く言われたくないの。朔と普通の歌手でいたいから」

「じゃあ決まりだな」

「うん」

あ、そうだと思い出したように朔が言った。

「精神科の方、東京でも見て貰えるようにもう一度行こう」

「うんわかった」

「紹介先は晴さんが勤めてる病院、受け入れてくれるって」

「治るのかな……」

「何もしなきゃ、きっと治らない。だから前に進もう、灯」

朔が伸ばした手を握って握手して応えた。
嫌そうに見てる同級生たちもいたけれど、私はもう気にしていなかった。