きみの春に、溶けていく

そこには、朔の苗字が書かれていて、古ぼけた小さなお墓があった。

「ここが朔のお母さんたちのお墓?」

「そうだよ」

「ーーねぇ、朔。もし答えたくなかったら言いたくないって言って。事故にあった時のこと、どのくらい覚えてる?」

朔は泣きそうな顔をして、首を横に振った。

「僕は、弱い。弱いから灯みたいに背負いきれなくてほとんど全部忘れてしまったんだ……」

「そんなことない! 弱くなんかない朔は誰よりも優しくて、誰よりも……」

大好きだと思うーーだけど。
そんなこと言う資格、今の私にはない気がして。

朔は花束を両親の墓に添えて、線香をあげ、手を合わせた。
私も真似して、横に座る。

「だから、全部もっていた、持ち続けた灯のことをいつもいつもすごいと思っていた」

「私も忘れちゃったけどね」

すると、朔は私を思い切り抱きしめた。

「まだある必ず。きっときっと失われてない約束が。ここに眠ってる」

「朔……」

「今は思い出せなくても、いつか必ず思い出す。灯ならできるよ。そのためなら僕はなんでもする」

「ありがとう……」

「変わらない思いは絶対にあるよ。歌手でもいい、なんでもいいから、思いを止めることだけはしないでいよう」

「うん!!」

朔はちょっと泣きながら、お墓に向かっていった。

「父さん、母さん、この人が僕が一生愛したい人です。覚えていられなかったけど、いつか父さんと母さんみたいに幸せになりたいです」

「朔、私ーー」

「いいんだよ。ただの僕の宣言だから答えなんて要らない」

「それでもうれしい。とてもうれしい。私たちは友達じゃなくて、特別なんだって覚えていたい。忘れたく……ないよぉ!!」

わーんと泣いて、セミのうるさいくらいの声が私の涙をかき消した。
朔は優しく、泣き止むまで私の背中を撫でてくれた。