きみの春に、溶けていく

気が付くと涙を流していた。

はじまりの風が吹いた気がして。
私はつい口に出していた。

「この歌、知ってるーー」

この歌声、この曲、この切なさ、胸を動かす確かな心ーー

「灯! 大丈夫?」

「私、この歌声、覚えてるの。心が」

「bihukaは有名だけど新曲だぞ? どうして?」

『それは貴方にその資格があるからよ』

はっと振り返ると、そこにはbihukaが居た。

「ねぇ、そこの2人。うちの事務所にこない?」

「え、え、え?」

「小春、晴。この子達、すごく才能を感じるの。今逃したら絶対後悔する」

「お姉ちゃん、いくらなんでも急すぎじゃ!?」

私はbihukaへ近づいていって、その手を握った。

「よろしくお願いします!」

だって”鍵”がここにあるのかもしれない。
私の記憶が反応した。
ここにしかない大事な宝物。

歌の中に託した想いなら、君に届くのかもしれない。
消えてしまっても、消えないのかもしれない。

「契約、しましょう。彼女が大事なんでしょう?」

晴さんは朔に向かって笑った。
朔は少し迷ってたが、手を取る。

「灯のためなら、僕にもやれることやらせてください」

おかしいよね。いきなり歌手なんて。
でも、確かにこの心が踊る。
ここでいいんだって。

2人で目指す未来が、私たちにだけできることが見つかった気がしたんだ。