「いらっしゃいませー」
近くの不動産屋に入った。
「あっ!前田さん!」
「有田」という名札をつけた男の人が寄ってきた。
「おお有田くん。久しぶりだね」
どうやら前田さんとは知り合いみたいだ。
「えっと、そちらの方は?」
「今日からウチの会社に入った原野くんだよ。仲良くしてやってくれ」
「原野です。よろしくお願いします」
俺がペコリと頭を下げると、有田さんもペコリと頭を下げた。
「それで、どんな家をお探しですか?」
「ああ、原野くんが事故物件に住みたいって言うから連れてきたんだ」
前田さんに負けたくなくて事故物件を選んだだけなんだけど。
この言葉はそっと心に留めておいた。
「事故物件!?その若さで君チャレンジャーだね」
有田さんは奥から「事故物件」と書いてあるファイルを持ってきた。
「さあさあ、ここに座ってください」


