「あっ、もしかして怖いの?」

「べ、別に…」


そうだ。幽霊なんているわけない。


「怖くなんかないですよ」

「本当にー?」


上司の前田さんはからかい気味に言ってくる。

ここで負けるわけにはいかない。


「いいですよ。事故物件、住んでみせますよ!」

「え?マジで言ってる?」



前田さんは何度も「本当に?」と言ってきた。


住むって言ってるじゃんか!



「はい。住みます」

「よし、そうと来たら不動産に行こう!」



前田さんは荷物を持って行く気満々だ。

「えっ、今からですか?」

「今じゃなかったらいつ行くのさ」



「早く行くよー」と言って歩き出した。

「ちょっと待ってくださいよ」


俺は前田さんの後を追いかけた。