春。

俺は大学を卒業して、憧れの上京を果たした。



「今日からお世話になります。原野淳司です」


東京の会社に就職して初日、上司にこんなことを言われた。



「ねぇねぇ、原野くんは幽霊信じる派?信じない派?」


何かと思えばこんな話。



ふざけてるのかよ。



「僕は信じないですね」


普通に考えて幽霊なんているわけないじゃん。



大人になってこんなことも知らないのかよ。





「そっかー。俺は信じてるけどな」



馬鹿馬鹿しい。



「じゃあ事故物件とか興味ない?」

「はい?」


事故物件?


事故物件って言ったって、ただの家だろ?



「もし興味あるならさ、住んでみない?」

「え?」