送信したスタンプを見届けて、私はソファの背もたれにドサッと沈み込んだ。
(どうしよう……課題のテーマは信仰対象の観察。バレたら停学。……詰んでるじゃん)
頭を抱えてうなだれていると、後ろから紗霧様の低い声が飛んできた。
「そんなに悩むなら、いっそ自分を観察してみたら良いだろ」
「え?」
「天音にも神社はあるだろ?そこに来た参拝客をテーマにすればレポートくらい書ける」
康親様はというと、相変わらずちゃぶ台に突っ伏して笑っていた。
「天音たんは真面目すぎるよ〜。僕は確か......信仰は愛だよ、愛。って感じで提出したから。そんなに難しく考えなくても良いんじゃないかな〜」
「再提出食らった理由それじゃん!」
「うん。でも先生には『勢いは評価する』って言われた」
「褒められてないよね!?」
私がツッコミを入れていると、再びスマホが震えた。
画面を覗くと、グルチャの通知がまた増えている。
《天音〜一緒に観察しよーぜ!》
《お。三馬鹿からお誘いきた》
《去年の資料見たけど、バレた奴六人いたらしいw》
《やっぱバレるんかな?》
(あー、やっぱり私だけじゃなかった……)
そんな時、紗霧様が「ご飯できたぞ」と声をかけてきた。
「……はぁ。とりあえず、ご飯食べながら考えよ」
「そうしろ。あとスマホは置け」
ちゃぶ台に並んだ夕食の湯気の向こうで、翡翠様がゆっくり箸を取りながら言う。
「天音、課題は悩むより行動した方が良い。ちゃんと取り組むだけで意味がある」
「はーい」
「ただし、バレるなよ」
「それが一番難しい!!」
その週末、私たち高天原学園二年A組は課題を済ませる為に集まった。
「じゃあ、チーム分けしようぜ」とお調子者の陽向が声を張る。
休日の街は賑わっていた。通りの反対側には古風な喫茶店があり、店先には季節の花と小さな黒板でメニューが書かれている。お洒落な喫茶店の外にはベンチが置かれ、街を眺めながらのんびりとお茶を楽しむ人々の姿もあった。
道を歩けば、ところどころに昔ながらの和菓子屋や駄菓子屋があり、窓から漂う甘い香りに思わず立ち止まってしまう。
「蒼月、そっちは逆!」
神楽が迷子になりそうな蒼月の首根っこを掴む。
「え、どこが逆だって……あっ、しまった!」
蒼月は慌てて地図を広げる。
「とりあえず、近くの喫茶店で作戦会議しようか」
そう提案して、私達は通りの角にある小さな喫茶店へ向かった。
結構レトロな雰囲気で、落ち着く。
「やっぱ、団子は外せない!」
陽向は注文した串団子を持ち、頬張る。
「私は……あ、たい焼きにしようかな〜」
「じゃあ、私は......」
メニュー表を見ていると、神楽がキョロキョロと店を見渡した。
「......蒼月がおらん」
「「え?」」
神楽の言葉に、私と陽向は同時に振り向いた。
座っていたはずの席には、空になったグラスだけが残っている。
「さっきまで居たよね!?」
「まさか……トイレ?」
「いや、あいつのことだから――」
神楽がため息をつきかけた瞬間、店の外から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「うわっ、これ全部食べて良いんですか!?サービス!?......あいたぁ!!」
……嫌な予感しかしない。
私たちはお会計を済ませ、慌てて店を飛び出した。
外では、蒼月がたい焼き片手にテンション高くはしゃいでいた。そしてそんな蒼月の頭にチョップを加えているのは、高天原学園でクラスメイトの飯沼優太くん。
その二人の向かいには、買い物袋を抱えた女の子が立っている。
――真央だった。
(ヤバいヤバいヤバいヤバい)
私以外は真央と面識がない。つまり、私以外の誰かがボロ出せば私の学校生活、終わる!?
「あれ、天音?」
棒立ちしている私に気づいた真央が、目を丸くする。
「あ、ま、真央!め、珍しいね〜〜!」
声が裏返った。冷や汗が首筋を伝う。
「天音の友達か?」
陽向が私と真央を見比べている。
素早くこくこくと頷く私。
とりあえずここを乗り切らないと......!!
「真央ちゃんって言うんだ!俺、陽向!こっちは神楽と蒼月と飯沼」
「よろ〜」
「よろしくね」
「よろしく」
「よ、よろしくお願いします……?」
一気に自己紹介が始まって、真央は少し戸惑いながら笑った。
「で、でさっ、真央はたまたま買い物してただけなんだよねっ!?」
「うん。でも、天音こそ何してるの?」
「えっと……か、課題!そう、課題の調査中でして!」
「調査?」
「あー……その、街の観察とか……文化とか……そ、そういうやつ!!」
言いながら、自分でも何を言ってるのか分からなくなってくる。
横で神楽がこめかみに手を当て、「何その雑な説明」と呟いた。
(どうにでもなれ......!!)
(どうしよう……課題のテーマは信仰対象の観察。バレたら停学。……詰んでるじゃん)
頭を抱えてうなだれていると、後ろから紗霧様の低い声が飛んできた。
「そんなに悩むなら、いっそ自分を観察してみたら良いだろ」
「え?」
「天音にも神社はあるだろ?そこに来た参拝客をテーマにすればレポートくらい書ける」
康親様はというと、相変わらずちゃぶ台に突っ伏して笑っていた。
「天音たんは真面目すぎるよ〜。僕は確か......信仰は愛だよ、愛。って感じで提出したから。そんなに難しく考えなくても良いんじゃないかな〜」
「再提出食らった理由それじゃん!」
「うん。でも先生には『勢いは評価する』って言われた」
「褒められてないよね!?」
私がツッコミを入れていると、再びスマホが震えた。
画面を覗くと、グルチャの通知がまた増えている。
《天音〜一緒に観察しよーぜ!》
《お。三馬鹿からお誘いきた》
《去年の資料見たけど、バレた奴六人いたらしいw》
《やっぱバレるんかな?》
(あー、やっぱり私だけじゃなかった……)
そんな時、紗霧様が「ご飯できたぞ」と声をかけてきた。
「……はぁ。とりあえず、ご飯食べながら考えよ」
「そうしろ。あとスマホは置け」
ちゃぶ台に並んだ夕食の湯気の向こうで、翡翠様がゆっくり箸を取りながら言う。
「天音、課題は悩むより行動した方が良い。ちゃんと取り組むだけで意味がある」
「はーい」
「ただし、バレるなよ」
「それが一番難しい!!」
その週末、私たち高天原学園二年A組は課題を済ませる為に集まった。
「じゃあ、チーム分けしようぜ」とお調子者の陽向が声を張る。
休日の街は賑わっていた。通りの反対側には古風な喫茶店があり、店先には季節の花と小さな黒板でメニューが書かれている。お洒落な喫茶店の外にはベンチが置かれ、街を眺めながらのんびりとお茶を楽しむ人々の姿もあった。
道を歩けば、ところどころに昔ながらの和菓子屋や駄菓子屋があり、窓から漂う甘い香りに思わず立ち止まってしまう。
「蒼月、そっちは逆!」
神楽が迷子になりそうな蒼月の首根っこを掴む。
「え、どこが逆だって……あっ、しまった!」
蒼月は慌てて地図を広げる。
「とりあえず、近くの喫茶店で作戦会議しようか」
そう提案して、私達は通りの角にある小さな喫茶店へ向かった。
結構レトロな雰囲気で、落ち着く。
「やっぱ、団子は外せない!」
陽向は注文した串団子を持ち、頬張る。
「私は……あ、たい焼きにしようかな〜」
「じゃあ、私は......」
メニュー表を見ていると、神楽がキョロキョロと店を見渡した。
「......蒼月がおらん」
「「え?」」
神楽の言葉に、私と陽向は同時に振り向いた。
座っていたはずの席には、空になったグラスだけが残っている。
「さっきまで居たよね!?」
「まさか……トイレ?」
「いや、あいつのことだから――」
神楽がため息をつきかけた瞬間、店の外から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「うわっ、これ全部食べて良いんですか!?サービス!?......あいたぁ!!」
……嫌な予感しかしない。
私たちはお会計を済ませ、慌てて店を飛び出した。
外では、蒼月がたい焼き片手にテンション高くはしゃいでいた。そしてそんな蒼月の頭にチョップを加えているのは、高天原学園でクラスメイトの飯沼優太くん。
その二人の向かいには、買い物袋を抱えた女の子が立っている。
――真央だった。
(ヤバいヤバいヤバいヤバい)
私以外は真央と面識がない。つまり、私以外の誰かがボロ出せば私の学校生活、終わる!?
「あれ、天音?」
棒立ちしている私に気づいた真央が、目を丸くする。
「あ、ま、真央!め、珍しいね〜〜!」
声が裏返った。冷や汗が首筋を伝う。
「天音の友達か?」
陽向が私と真央を見比べている。
素早くこくこくと頷く私。
とりあえずここを乗り切らないと......!!
「真央ちゃんって言うんだ!俺、陽向!こっちは神楽と蒼月と飯沼」
「よろ〜」
「よろしくね」
「よろしく」
「よ、よろしくお願いします……?」
一気に自己紹介が始まって、真央は少し戸惑いながら笑った。
「で、でさっ、真央はたまたま買い物してただけなんだよねっ!?」
「うん。でも、天音こそ何してるの?」
「えっと……か、課題!そう、課題の調査中でして!」
「調査?」
「あー……その、街の観察とか……文化とか……そ、そういうやつ!!」
言いながら、自分でも何を言ってるのか分からなくなってくる。
横で神楽がこめかみに手を当て、「何その雑な説明」と呟いた。
(どうにでもなれ......!!)



