夜のラウンジ。
静かな照明の下で、琥珀色の液体がグラスに揺れていた。
皐月は、玲奈に呼び出されてそこに座っていた。
「急に呼び出してごめんね。でも……どうしても伝えたいことがあるの」
玲奈は微笑んでいた。
けれどその笑みの奥に潜む影を、皐月は感じ取っていた。
「……なに?」
「皐月。あなた、まだ玲臣さんを信じたいって思ってるでしょ?」
「……」
答えられない沈黙が、すでに答えになっていた。
玲奈はグラスを置き、真っ直ぐに皐月を見つめた。
「でも、彼は結局、私を選ぶわ」
「……っ」
「写真のことも、記事のことも……全部、偶然なんかじゃない。彼は私を庇うために動いてくれてるの」
「……そんなこと……」
「信じたくないんでしょ。でも、事実よ。私、彼から直接言われたもの。“君を放っておけない”って」
玲奈の言葉が鋭い刃のように胸に突き刺さる。
喉が乾き、指先が冷えていく。
「……やっぱり……玲臣さんは……」
皐月の瞳に涙がにじむ。
その瞬間——。
「——嘘を重ねるな」
低い声が背後から落ちた。
振り返ると、ラウンジの入り口に玲臣が立っていた。
黒いコートの裾が揺れ、その瞳は烈火のように鋭かった。
「れ、玲臣さん……!」
「何を言った、玲奈」
玲奈の表情が一瞬で凍る。
皐月は息を呑み、二人の間に挟まれて動けなかった。
「俺がいつ、お前を選ぶと言った?」
玲臣の声は冷たく、はっきりしていた。
「……っ。違うの、私はただ……!」
「お前がしたことはもう全部分かってる。記事を流したのも、皐月に嘘を吹き込んだのも」
玲奈は震え、唇を噛んだ。
「……だって……どうしても、欲しかったの。あなたの隣に立てるのは私だと思ってた」
涙が溢れた。
その涙は、皐月をさらに苦しめた。
「玲臣さん……」
皐月は震える声で呼んだ。
「……全部、本当なの……? 玲奈が嘘を……?」
玲臣は強く頷いた。
「皐月。俺の隣にいるのは、お前以外にありえない」
真っ直ぐな声。
皐月の胸が大きく揺れる。
信じたい——けれど、親友を失う痛みに心が引き裂かれる。
玲奈は嗚咽混じりに笑った。
「皐月。あなたは全部持ってるくせに、まだ彼まで欲しいの?」
「……違う……私は……」
声が震え、涙が止まらない。
友情と愛。
二つの大切なものが、皐月の心を引き裂いていた。
ラウンジの窓を叩く雨が再び強まり、
夜の街に雷鳴が響いた。
——罠は崩れた。
けれど、残された傷は簡単には癒えそうになかった。
静かな照明の下で、琥珀色の液体がグラスに揺れていた。
皐月は、玲奈に呼び出されてそこに座っていた。
「急に呼び出してごめんね。でも……どうしても伝えたいことがあるの」
玲奈は微笑んでいた。
けれどその笑みの奥に潜む影を、皐月は感じ取っていた。
「……なに?」
「皐月。あなた、まだ玲臣さんを信じたいって思ってるでしょ?」
「……」
答えられない沈黙が、すでに答えになっていた。
玲奈はグラスを置き、真っ直ぐに皐月を見つめた。
「でも、彼は結局、私を選ぶわ」
「……っ」
「写真のことも、記事のことも……全部、偶然なんかじゃない。彼は私を庇うために動いてくれてるの」
「……そんなこと……」
「信じたくないんでしょ。でも、事実よ。私、彼から直接言われたもの。“君を放っておけない”って」
玲奈の言葉が鋭い刃のように胸に突き刺さる。
喉が乾き、指先が冷えていく。
「……やっぱり……玲臣さんは……」
皐月の瞳に涙がにじむ。
その瞬間——。
「——嘘を重ねるな」
低い声が背後から落ちた。
振り返ると、ラウンジの入り口に玲臣が立っていた。
黒いコートの裾が揺れ、その瞳は烈火のように鋭かった。
「れ、玲臣さん……!」
「何を言った、玲奈」
玲奈の表情が一瞬で凍る。
皐月は息を呑み、二人の間に挟まれて動けなかった。
「俺がいつ、お前を選ぶと言った?」
玲臣の声は冷たく、はっきりしていた。
「……っ。違うの、私はただ……!」
「お前がしたことはもう全部分かってる。記事を流したのも、皐月に嘘を吹き込んだのも」
玲奈は震え、唇を噛んだ。
「……だって……どうしても、欲しかったの。あなたの隣に立てるのは私だと思ってた」
涙が溢れた。
その涙は、皐月をさらに苦しめた。
「玲臣さん……」
皐月は震える声で呼んだ。
「……全部、本当なの……? 玲奈が嘘を……?」
玲臣は強く頷いた。
「皐月。俺の隣にいるのは、お前以外にありえない」
真っ直ぐな声。
皐月の胸が大きく揺れる。
信じたい——けれど、親友を失う痛みに心が引き裂かれる。
玲奈は嗚咽混じりに笑った。
「皐月。あなたは全部持ってるくせに、まだ彼まで欲しいの?」
「……違う……私は……」
声が震え、涙が止まらない。
友情と愛。
二つの大切なものが、皐月の心を引き裂いていた。
ラウンジの窓を叩く雨が再び強まり、
夜の街に雷鳴が響いた。
——罠は崩れた。
けれど、残された傷は簡単には癒えそうになかった。

