〇学校/階段
誰もいない階段で並んで座っている凛真と樹音。文化祭で賑わう学校もここは静か。
樹音「落ち着いた?」
凛真「うん、ごめんね…ありがと」
樹音「……。」
涙を拭う凛真を見て、心配そうに。
樹音「彩人とケンカって初めて?」
凛真「え?うーん…どうだろ、子供の頃はおもちゃの取り合いとかでケンカしたかなぁ」
樹音「え、意外!!彩人はなんでも凛真に譲るかと思った!」
凛真「……。」「そうだね、今ならきっと譲ってくれるよ。でも昔はそうゆうケンカもしてたよ」
昔を思い出すような顔で、懐かしそうに微笑む。
凛真「あの頃は彩人も、自分の気持ち言えたのかな」
切なそうに、また泣きそうになって下を向く。
樹音「今も好き勝手自分の気持ち言ってると思うけどね」※デフォルメっぽくつんとした顔で
樹音、両手を体の隣について階段の下に足を伸ばして座り直す。正面を向いて目を閉じて、優しい口調で。
樹音「でもさ、もし彩人が自分の気持ち言えずにいるんだとしたらそれは凛真のことが好きだからだと私は思うけどな」
凛真「え?」
樹音「だって譲ってくれるのだって凛真が喜ぶからじゃん?」
樹音、凛真の方を見る。凛真も樹音の方を見ている。
樹音「2人のことだからテキトーなことは言えないけど、私は彩人に凛真以外の好きな人なんていないと思うし」
樹音「(にこっと笑って)だって彩人、凛真のこと大好きじゃん!」
あったかい空気流れるような背景。
樹音「だから彩人の好きな人が凛真じゃないなんてありえないんだよね~」
樹音、前を見てぷくっと頬を膨らませて考える様子を見せる。
凛真「……。」
樹音「誰なの?それ、私の知ってる人?」
凛真「…知らない人」※少し俯き加減
樹音「ふーん、そっか…じゃあわかんないな~。知ってる人ならなんとなく想像つくかな~とかって思ったけど」
凛真の方を見て。
樹音「でもさ、凛真は彩人が好きなんだよね?」
凛真、少し泣きそうな顔をしながら赤くして前を向いてゆっくり頷く。
凛真「…うん」
樹音「じゃあ彩人に気持ち伝えなよ」
凛真「……。」※頭抱える
凛真「無理だよ~!言えないよ~~~!」
樹音「なんで?ほぼ勝ち確と思うけど」
凛真「そうじゃないの、そうじゃないの~~~~!」
樹音「まぁそこは私にはわかんないしね」
凛真、赤くなった頬が元に戻らないままキュッと口を紡いで考えてる様子。
樹音「(スマホ見て)あ、そろそろミスタミスコンに準備しなきゃだから私行くわ」
樹音、立ち上がる。
凛真、樹音の方を見上げる。
凛真「あ、ごめんね!話聞いてくれてありがとっ」
樹音「いいえっ♡」
樹音、くるっと振り返る。
樹音「凛真もミスタミスコン来るよね?」
凛真「…うん、行く」
樹音「絶対おいでよ、彩人スネるから!」
ばいばいと手を振ってミスタミスコンに向かう樹音。
はぁっと息を吐く凛真、ぽつんと階段に座ったまま。
〇学校/賑わってる廊下
トイレから出て来る凛真、泣いた跡を直してくる。
凛真(もうすぐ始まるな)
とぼとぼ廊下を歩く。
凛真(行きずらいし、でも樹音も出るし彩人も…)
足が止まる、進めなくなる。
凛真(どうすればいいんだろう、私…)
彩人母「凛真ちゃ〜ん!」
おーいと手を振りながら走ってくる。凛真の前まで走ってきて、にこっと笑う。
彩人母「よかった、ばいばい言おうと思って探してたんだ!」
凛真「?」
彩人母「あたしそろそろ帰るね!」
凛真「もうすぐミスタミスコン始まりますけど…」
彩人母「うん、でも連絡来たから!」※嬉しそうに
凛真(連絡?って誰から…??)
凛真「…彩人出ますけどいいんですか?」
彩人母「いーよいーよ、暇だったから来ただけだし!ちょっと時間余ってたんだよね~」
凛真「……。」※ちょっと納得出来なそうな顔
凛真(そんな言い方しなくても…、それでも彩人は来てくれてうれしかったと思うんだけどなぁ)
彩人母「あ、そうだ聞いてよ!」※パッと目を大きくして
彩人母「今日久しぶりに息子と手繋いじゃった~♡」
ケラケラと嬉しそうに報告する彩人母に血相を変える凛真。
凛真(え…?)
彩人母「あたしの方がドキドキしちゃったー♡」
凛真(何を…言ってるの…?)※ゾッとした顔
彩人母「もう男なんだもん!カッコよく育って、あれが私のものなの気分いい~♬」
凛真(この人は一体何を言ってるの?)
凛真「手、握ったんですか…?」
凛真(だって彩人はー…)
彩人母「うん」※ケロッとして
凛真(悪気がない…!!!)
彩人母の何も感じてない態度に驚いて、目を丸くする。
凛真(なんで?どうして?そんなことー…っ)
凛真、ハッと思い出す。
凛真(だから手震えてたんだ!)
抱きしめられた時、彩人の手が震えてたことを思い出す。
凛真(あの時震えてたのはそうゆうことだったんだ…!)
彩人母「凛真ちゃん?」
潤んだ瞳で彩人母の方を見る。
彩人母「凛真ちゃんどうしたの!?なんかあった!?」
凛真(どうしてわからないの?なんで気付いてあげられないの?)
凛真「…なんでも、ないです」
俯いて、顔を上げた時には笑って返す。
凛真「…ごめんなさい、私もう行かなきゃ」
彩人母「あ、そう?じゃあばいばい、またね!」
手を振る彩人母と別れて走り出す。泣きながら必死に足を動かす。
凛真(気付いてあげられなかった!苦しんでたのにわかってあげられなかった…!)
凛真(ごめんね…っ)(彩人…!!!)
〇学校/体育館
ミスタミスコン最中、ステージの上でやる気なさそうに立っている彩人。他にも選ばれた男女が並んでいる、その端っこに彩人。
彩人(なんで俺がこれに出なきゃいけねーんだよ、めんどくせぇなぁ…っ)
イライラして眉間にしわ。
司会者(他クラスの文化祭実行委員/蝶ネクタイ/マイクを持っている)「では次は1年1組も持田彩人くん!」
ステージ下のギャラリー「「「「「キャーーーーー!!!」」」」」
司会者「おぉ!紹介しただけでこの人気!!」
司会者「じゃあいつか質問していきまぁーす!」
司会者「好きな食べ物は何ですか~?」
彩人「はぁ!?」
司会者「教えてください♡」
彩人にマイクを向ける。
彩人(何なんだよそのどーでもいい質問は!)
司会者「どうぞ(圧)!」
彩人「…いちご(イラッとしながら)」
司会者「意外と可愛いんですねぇ!」
彩人、イラッとする。
司会者「では好きな色は?」
彩人「ねぇよ、そんなもん」
司会者「好きな教科は?」
彩人「考えたことない」
司会者「お風呂に入ったらどこから洗いますか!?」
彩人(だから何なんだよどーでもいい質問は…!?)
彩人「足」
司会者「意外にも!?」
彩人(あぁ~~~~~~っ、むかつく!!!!!)
隣に立ってる樹音、見て見ぬふり。
彩人(マジで何なんだよ!?なんで俺がこんなこと、こんなことしてる場合じゃねぇーんだよ!)(こんなことしたくもねぇーのに凛真が…っ)
彩人(…凛真が、やってほしいって言うからだろ?)(なのになんで凛真は…)
ふと顔を上げたらぜぇはぁ息をした凛真が来ていることを確認する。
彩人(凛真…!!?)
凛真、彩人が自分を見たことに気付きドキッとする。明らかに泣いた跡がある。
司会者「じゃあ最後の質問でーす!彼女はいますか~~~!?」
キャーと盛り上がる会場。
数秒の間ののち、彩人が司会者からマイクを奪い取る。戸惑う司会者をよそにすぅっと息を吸って、真っ直ぐ凛真の方を見る。
彩人「彼女はいませんけど、一生を誓った子がいます」
彩人のアップ、凛真のアップ、引きで2人だけにピンスポが当たって見つめ合うような画。キャーーーー!!と体育館中が大騒ぎになる。
彩人「そうゆうことなんで」
マイクを返す。
司会者「えぇ!?」
彩人、そのままステージから飛び降りて凛真の方へ走り出す。彩人の視線から察したギャラリーが凛真への道を開ける。
凛真(え!?向かってくる…!?)(待ってすごい顔で向かってくるんだけど!?)
吊り上がった目で、凛真しか見てない。
凛真(どうしよう!?)(心配で来てみたけど、そんな向かって来られたら…っ)
凛真、くるっと反対側を向いて走り出す。
彩人「凛真…!」
体育館から出ていく、走っていく凛真を追いかける彩人。
凛真(やっぱりなんて言ったらいいかわかんないんだもんっ)
彩人「待てよ凛真!」
凛真(だって、私ずっと…っ)(ずっと…!)
彩人「凛真…!!!」
追いかけて来た彩人、凛真の手を掴む。ハッとする凛真。
凛真「彩人っ」
凛真「手…!?」
彩人、下を向いてはぁはぁと息をする。肩を上下に大きく揺らして、それでも手を離そうとしない彩人に動揺する凛真。
凛真「手離した方がいいよ!」「ねぇ彩人!大丈夫!?」
彩人の荒い呼吸が止まらないことに不安になる。
凛真「彩人っ!私もう逃げないから!ここにいるから!!」「ねぇ…っ」
彩人、ぎゅっと握る手を強くする。
凛真「離した方がっ」
彩人「違うから…!!!」※響くくらい大きな声
彩人「繋ぐのが怖いんじゃない…」「離すのが怖いんだよ…っ!」
凛真「…っ」
しゃがみ込んで、顔を伏せる。手を引かれた凛真もしゃがみ込む。
彩人「…離したらどこかに行っちゃう気がして、置いてかれるみたいで…(どんどん弱々しくなっていく)」
彩人「母さんがいつも俺の手を振り払って…出ていくから、もう二度と戻って来ないんじゃないかって怖かった…」
凛真(彩人…)
彩人「だから今も怖い、俺の前からいなくなっちゃったらって思うと怖い」
繋いだ手が震えてる。
彩人「凛真がいつかいなくなっちゃうんじゃないかって思うと怖い…」
ぎゅっと手を握る。
彩人「凛真は俺の特別なんだよ」
顔を上げる。見つめ合う2人。
彩人「凛真が笑ってたらうれしい、凛真が泣いてたら悲しい、凛真がそばにいてくれたら…他に何もいらない」
泣きそな顔の凛真。
彩人「俺は最初から凛真しか見てないから」「凛真だから不安になるし、凛真だから心配になる、凛真だから…」
彩人「手も繋ぎたい」
凛真、涙を流す。
彩人「凛真が好きだよ」
凛真(震えた彩人の手から伝わってくる。きっと本当は怖いんだ、でも笑ってくれるんだ、私のために…)
ボロボロ涙を流す。
凛真(どうしてわかってなかったのかな?彩人はいつだってこんなに真っ直ぐだったのに)
彩人「俺はずっと凛真が好き」「凛真といたい、これからもずっとずっと凛真が嫌だって言っても凛真といたい」
彩人「ずっと一緒にいてよ」
〇過去回想/彩人宅
母親が出て行って数日後、散らかった部屋に食べ物はなく真夏の暑い日でぐったり壁に寄りかかっている彩人(5歳)ドアの向こうから必死そうな声が聞こえる。
凛真母「ここです!ここ…っ」
警察「今開けますから下がっていてください!」
ガチャと鍵が開いて、警察が入ってくる。
警察「彩人くんいるー!?」「彩人くーん!」
ぴくっと動くもそれ以上は動けない彩人、意識がぼやーっとしている。
警察「彩人くん!あ、いた…!」
警察の後ろからタタタッと走って部屋の中に入っていく凛真(5歳)
りま「あやと…!」
泣きながら、抱きしめる。
りま「あやとだいじょうぶ!?あやとしなないでっ」
あやと「りま…?」
りま「あやともう1人じゃないからね!」「りまがいる!りまがいるから…!」
ぎゅっと彩人の手を握ってうわーんと泣く凛真。
りま「ずっとりまといてよ…!」
力のない手で握り返す彩人。
〇現在
彩人「ずっと好きなんだよ、凛真のこと」
見つめ合って。
彩人「だから凛真なら大丈夫だよ」
手を離そうとする。
凛真(彩人のために何ができるんだろうって考えてた。彩人に笑っていてほしくて、私が彩人にできることってなんだろうって…でもそうじゃないね、もっと他にすることがあったよね)
彩人「凛真なら怖くない、手を離すことも…」
凛真(私が彩人にしなきゃいけないこと、それはきっと素直になることなんだー…)
手を離して立ち上がろうとした彩人に抱き着く。
彩人「凛真?」
凛真「離さないで!」
ぎゅーっと抱きしめる。
凛真「彩人が好き、彩人のことが好きだよ!」「私もずっと好きなの…っ」
凛真(ずっとそばにいて、私もずっと一緒にいるから)(彩人が嫌だって言っても一緒にいるから)
〇過去回想(5歳)
笑い合って手を繋ぐ2人。
りま「これからもずーっといっしょにいてね!」
それにうれしそうに笑って返す彩人。
〇現在
抱き合う2人。しあわせそうな表情で。
誰もいない階段で並んで座っている凛真と樹音。文化祭で賑わう学校もここは静か。
樹音「落ち着いた?」
凛真「うん、ごめんね…ありがと」
樹音「……。」
涙を拭う凛真を見て、心配そうに。
樹音「彩人とケンカって初めて?」
凛真「え?うーん…どうだろ、子供の頃はおもちゃの取り合いとかでケンカしたかなぁ」
樹音「え、意外!!彩人はなんでも凛真に譲るかと思った!」
凛真「……。」「そうだね、今ならきっと譲ってくれるよ。でも昔はそうゆうケンカもしてたよ」
昔を思い出すような顔で、懐かしそうに微笑む。
凛真「あの頃は彩人も、自分の気持ち言えたのかな」
切なそうに、また泣きそうになって下を向く。
樹音「今も好き勝手自分の気持ち言ってると思うけどね」※デフォルメっぽくつんとした顔で
樹音、両手を体の隣について階段の下に足を伸ばして座り直す。正面を向いて目を閉じて、優しい口調で。
樹音「でもさ、もし彩人が自分の気持ち言えずにいるんだとしたらそれは凛真のことが好きだからだと私は思うけどな」
凛真「え?」
樹音「だって譲ってくれるのだって凛真が喜ぶからじゃん?」
樹音、凛真の方を見る。凛真も樹音の方を見ている。
樹音「2人のことだからテキトーなことは言えないけど、私は彩人に凛真以外の好きな人なんていないと思うし」
樹音「(にこっと笑って)だって彩人、凛真のこと大好きじゃん!」
あったかい空気流れるような背景。
樹音「だから彩人の好きな人が凛真じゃないなんてありえないんだよね~」
樹音、前を見てぷくっと頬を膨らませて考える様子を見せる。
凛真「……。」
樹音「誰なの?それ、私の知ってる人?」
凛真「…知らない人」※少し俯き加減
樹音「ふーん、そっか…じゃあわかんないな~。知ってる人ならなんとなく想像つくかな~とかって思ったけど」
凛真の方を見て。
樹音「でもさ、凛真は彩人が好きなんだよね?」
凛真、少し泣きそうな顔をしながら赤くして前を向いてゆっくり頷く。
凛真「…うん」
樹音「じゃあ彩人に気持ち伝えなよ」
凛真「……。」※頭抱える
凛真「無理だよ~!言えないよ~~~!」
樹音「なんで?ほぼ勝ち確と思うけど」
凛真「そうじゃないの、そうじゃないの~~~~!」
樹音「まぁそこは私にはわかんないしね」
凛真、赤くなった頬が元に戻らないままキュッと口を紡いで考えてる様子。
樹音「(スマホ見て)あ、そろそろミスタミスコンに準備しなきゃだから私行くわ」
樹音、立ち上がる。
凛真、樹音の方を見上げる。
凛真「あ、ごめんね!話聞いてくれてありがとっ」
樹音「いいえっ♡」
樹音、くるっと振り返る。
樹音「凛真もミスタミスコン来るよね?」
凛真「…うん、行く」
樹音「絶対おいでよ、彩人スネるから!」
ばいばいと手を振ってミスタミスコンに向かう樹音。
はぁっと息を吐く凛真、ぽつんと階段に座ったまま。
〇学校/賑わってる廊下
トイレから出て来る凛真、泣いた跡を直してくる。
凛真(もうすぐ始まるな)
とぼとぼ廊下を歩く。
凛真(行きずらいし、でも樹音も出るし彩人も…)
足が止まる、進めなくなる。
凛真(どうすればいいんだろう、私…)
彩人母「凛真ちゃ〜ん!」
おーいと手を振りながら走ってくる。凛真の前まで走ってきて、にこっと笑う。
彩人母「よかった、ばいばい言おうと思って探してたんだ!」
凛真「?」
彩人母「あたしそろそろ帰るね!」
凛真「もうすぐミスタミスコン始まりますけど…」
彩人母「うん、でも連絡来たから!」※嬉しそうに
凛真(連絡?って誰から…??)
凛真「…彩人出ますけどいいんですか?」
彩人母「いーよいーよ、暇だったから来ただけだし!ちょっと時間余ってたんだよね~」
凛真「……。」※ちょっと納得出来なそうな顔
凛真(そんな言い方しなくても…、それでも彩人は来てくれてうれしかったと思うんだけどなぁ)
彩人母「あ、そうだ聞いてよ!」※パッと目を大きくして
彩人母「今日久しぶりに息子と手繋いじゃった~♡」
ケラケラと嬉しそうに報告する彩人母に血相を変える凛真。
凛真(え…?)
彩人母「あたしの方がドキドキしちゃったー♡」
凛真(何を…言ってるの…?)※ゾッとした顔
彩人母「もう男なんだもん!カッコよく育って、あれが私のものなの気分いい~♬」
凛真(この人は一体何を言ってるの?)
凛真「手、握ったんですか…?」
凛真(だって彩人はー…)
彩人母「うん」※ケロッとして
凛真(悪気がない…!!!)
彩人母の何も感じてない態度に驚いて、目を丸くする。
凛真(なんで?どうして?そんなことー…っ)
凛真、ハッと思い出す。
凛真(だから手震えてたんだ!)
抱きしめられた時、彩人の手が震えてたことを思い出す。
凛真(あの時震えてたのはそうゆうことだったんだ…!)
彩人母「凛真ちゃん?」
潤んだ瞳で彩人母の方を見る。
彩人母「凛真ちゃんどうしたの!?なんかあった!?」
凛真(どうしてわからないの?なんで気付いてあげられないの?)
凛真「…なんでも、ないです」
俯いて、顔を上げた時には笑って返す。
凛真「…ごめんなさい、私もう行かなきゃ」
彩人母「あ、そう?じゃあばいばい、またね!」
手を振る彩人母と別れて走り出す。泣きながら必死に足を動かす。
凛真(気付いてあげられなかった!苦しんでたのにわかってあげられなかった…!)
凛真(ごめんね…っ)(彩人…!!!)
〇学校/体育館
ミスタミスコン最中、ステージの上でやる気なさそうに立っている彩人。他にも選ばれた男女が並んでいる、その端っこに彩人。
彩人(なんで俺がこれに出なきゃいけねーんだよ、めんどくせぇなぁ…っ)
イライラして眉間にしわ。
司会者(他クラスの文化祭実行委員/蝶ネクタイ/マイクを持っている)「では次は1年1組も持田彩人くん!」
ステージ下のギャラリー「「「「「キャーーーーー!!!」」」」」
司会者「おぉ!紹介しただけでこの人気!!」
司会者「じゃあいつか質問していきまぁーす!」
司会者「好きな食べ物は何ですか~?」
彩人「はぁ!?」
司会者「教えてください♡」
彩人にマイクを向ける。
彩人(何なんだよそのどーでもいい質問は!)
司会者「どうぞ(圧)!」
彩人「…いちご(イラッとしながら)」
司会者「意外と可愛いんですねぇ!」
彩人、イラッとする。
司会者「では好きな色は?」
彩人「ねぇよ、そんなもん」
司会者「好きな教科は?」
彩人「考えたことない」
司会者「お風呂に入ったらどこから洗いますか!?」
彩人(だから何なんだよどーでもいい質問は…!?)
彩人「足」
司会者「意外にも!?」
彩人(あぁ~~~~~~っ、むかつく!!!!!)
隣に立ってる樹音、見て見ぬふり。
彩人(マジで何なんだよ!?なんで俺がこんなこと、こんなことしてる場合じゃねぇーんだよ!)(こんなことしたくもねぇーのに凛真が…っ)
彩人(…凛真が、やってほしいって言うからだろ?)(なのになんで凛真は…)
ふと顔を上げたらぜぇはぁ息をした凛真が来ていることを確認する。
彩人(凛真…!!?)
凛真、彩人が自分を見たことに気付きドキッとする。明らかに泣いた跡がある。
司会者「じゃあ最後の質問でーす!彼女はいますか~~~!?」
キャーと盛り上がる会場。
数秒の間ののち、彩人が司会者からマイクを奪い取る。戸惑う司会者をよそにすぅっと息を吸って、真っ直ぐ凛真の方を見る。
彩人「彼女はいませんけど、一生を誓った子がいます」
彩人のアップ、凛真のアップ、引きで2人だけにピンスポが当たって見つめ合うような画。キャーーーー!!と体育館中が大騒ぎになる。
彩人「そうゆうことなんで」
マイクを返す。
司会者「えぇ!?」
彩人、そのままステージから飛び降りて凛真の方へ走り出す。彩人の視線から察したギャラリーが凛真への道を開ける。
凛真(え!?向かってくる…!?)(待ってすごい顔で向かってくるんだけど!?)
吊り上がった目で、凛真しか見てない。
凛真(どうしよう!?)(心配で来てみたけど、そんな向かって来られたら…っ)
凛真、くるっと反対側を向いて走り出す。
彩人「凛真…!」
体育館から出ていく、走っていく凛真を追いかける彩人。
凛真(やっぱりなんて言ったらいいかわかんないんだもんっ)
彩人「待てよ凛真!」
凛真(だって、私ずっと…っ)(ずっと…!)
彩人「凛真…!!!」
追いかけて来た彩人、凛真の手を掴む。ハッとする凛真。
凛真「彩人っ」
凛真「手…!?」
彩人、下を向いてはぁはぁと息をする。肩を上下に大きく揺らして、それでも手を離そうとしない彩人に動揺する凛真。
凛真「手離した方がいいよ!」「ねぇ彩人!大丈夫!?」
彩人の荒い呼吸が止まらないことに不安になる。
凛真「彩人っ!私もう逃げないから!ここにいるから!!」「ねぇ…っ」
彩人、ぎゅっと握る手を強くする。
凛真「離した方がっ」
彩人「違うから…!!!」※響くくらい大きな声
彩人「繋ぐのが怖いんじゃない…」「離すのが怖いんだよ…っ!」
凛真「…っ」
しゃがみ込んで、顔を伏せる。手を引かれた凛真もしゃがみ込む。
彩人「…離したらどこかに行っちゃう気がして、置いてかれるみたいで…(どんどん弱々しくなっていく)」
彩人「母さんがいつも俺の手を振り払って…出ていくから、もう二度と戻って来ないんじゃないかって怖かった…」
凛真(彩人…)
彩人「だから今も怖い、俺の前からいなくなっちゃったらって思うと怖い」
繋いだ手が震えてる。
彩人「凛真がいつかいなくなっちゃうんじゃないかって思うと怖い…」
ぎゅっと手を握る。
彩人「凛真は俺の特別なんだよ」
顔を上げる。見つめ合う2人。
彩人「凛真が笑ってたらうれしい、凛真が泣いてたら悲しい、凛真がそばにいてくれたら…他に何もいらない」
泣きそな顔の凛真。
彩人「俺は最初から凛真しか見てないから」「凛真だから不安になるし、凛真だから心配になる、凛真だから…」
彩人「手も繋ぎたい」
凛真、涙を流す。
彩人「凛真が好きだよ」
凛真(震えた彩人の手から伝わってくる。きっと本当は怖いんだ、でも笑ってくれるんだ、私のために…)
ボロボロ涙を流す。
凛真(どうしてわかってなかったのかな?彩人はいつだってこんなに真っ直ぐだったのに)
彩人「俺はずっと凛真が好き」「凛真といたい、これからもずっとずっと凛真が嫌だって言っても凛真といたい」
彩人「ずっと一緒にいてよ」
〇過去回想/彩人宅
母親が出て行って数日後、散らかった部屋に食べ物はなく真夏の暑い日でぐったり壁に寄りかかっている彩人(5歳)ドアの向こうから必死そうな声が聞こえる。
凛真母「ここです!ここ…っ」
警察「今開けますから下がっていてください!」
ガチャと鍵が開いて、警察が入ってくる。
警察「彩人くんいるー!?」「彩人くーん!」
ぴくっと動くもそれ以上は動けない彩人、意識がぼやーっとしている。
警察「彩人くん!あ、いた…!」
警察の後ろからタタタッと走って部屋の中に入っていく凛真(5歳)
りま「あやと…!」
泣きながら、抱きしめる。
りま「あやとだいじょうぶ!?あやとしなないでっ」
あやと「りま…?」
りま「あやともう1人じゃないからね!」「りまがいる!りまがいるから…!」
ぎゅっと彩人の手を握ってうわーんと泣く凛真。
りま「ずっとりまといてよ…!」
力のない手で握り返す彩人。
〇現在
彩人「ずっと好きなんだよ、凛真のこと」
見つめ合って。
彩人「だから凛真なら大丈夫だよ」
手を離そうとする。
凛真(彩人のために何ができるんだろうって考えてた。彩人に笑っていてほしくて、私が彩人にできることってなんだろうって…でもそうじゃないね、もっと他にすることがあったよね)
彩人「凛真なら怖くない、手を離すことも…」
凛真(私が彩人にしなきゃいけないこと、それはきっと素直になることなんだー…)
手を離して立ち上がろうとした彩人に抱き着く。
彩人「凛真?」
凛真「離さないで!」
ぎゅーっと抱きしめる。
凛真「彩人が好き、彩人のことが好きだよ!」「私もずっと好きなの…っ」
凛真(ずっとそばにいて、私もずっと一緒にいるから)(彩人が嫌だって言っても一緒にいるから)
〇過去回想(5歳)
笑い合って手を繋ぐ2人。
りま「これからもずーっといっしょにいてね!」
それにうれしそうに笑って返す彩人。
〇現在
抱き合う2人。しあわせそうな表情で。



