「……分かった。だが、俺は君を絶対に手放さない」
怜司の声には、強い決意と焦燥が滲んでいた。
その瞳に宿る熱を見て、紗良の胸はさらに締めつけられる。
「どうして……そこまで言えるの?」
「君を愛しているからだ」
「本当に……?」
問いかけた声は涙に揺れていた。
怜司は答えようとしたが、喉に言葉が詰まった。
彼には言えない事情がある――その沈黙が、紗良には裏切りの証に思えた。
「……やっぱり、嘘なのね」
紗良の呟きに、怜司ははっと顔を上げる。
「違う! 俺は――」
「もういいの。私、疲れたの」
背を向けて歩き出す紗良の姿に、怜司は一歩踏み出しかけて、足を止めた。
引き留めれば、さらに彼女を傷つける。
だが、黙って見送れば、心は完全に離れてしまう。
苦悩の末、怜司は拳を握りしめ、低く呟いた。
「……絶対に諦めない」
自室に戻った紗良は、扉を閉めると同時に力なく床に座り込んだ。
「怜司さん……どうして信じられないの……」
嗚咽が喉を震わせ、頬を濡らしていく。
愛しているのに信じられない。
求めているのに拒んでしまう。
矛盾した想いに押し潰されながら、紗良はただ夜の闇に身を委ねるしかなかった。
その翌朝。
邸宅を出る怜司の背中を見送ることもできず、紗良はカーテンの陰に隠れていた。
胸の奥で、愛と不信の狭間に揺れる痛みが、冷たい杭のように突き刺さっていた。
――ふたりの心は、決定的に離れ始めていた
怜司の声には、強い決意と焦燥が滲んでいた。
その瞳に宿る熱を見て、紗良の胸はさらに締めつけられる。
「どうして……そこまで言えるの?」
「君を愛しているからだ」
「本当に……?」
問いかけた声は涙に揺れていた。
怜司は答えようとしたが、喉に言葉が詰まった。
彼には言えない事情がある――その沈黙が、紗良には裏切りの証に思えた。
「……やっぱり、嘘なのね」
紗良の呟きに、怜司ははっと顔を上げる。
「違う! 俺は――」
「もういいの。私、疲れたの」
背を向けて歩き出す紗良の姿に、怜司は一歩踏み出しかけて、足を止めた。
引き留めれば、さらに彼女を傷つける。
だが、黙って見送れば、心は完全に離れてしまう。
苦悩の末、怜司は拳を握りしめ、低く呟いた。
「……絶対に諦めない」
自室に戻った紗良は、扉を閉めると同時に力なく床に座り込んだ。
「怜司さん……どうして信じられないの……」
嗚咽が喉を震わせ、頬を濡らしていく。
愛しているのに信じられない。
求めているのに拒んでしまう。
矛盾した想いに押し潰されながら、紗良はただ夜の闇に身を委ねるしかなかった。
その翌朝。
邸宅を出る怜司の背中を見送ることもできず、紗良はカーテンの陰に隠れていた。
胸の奥で、愛と不信の狭間に揺れる痛みが、冷たい杭のように突き刺さっていた。
――ふたりの心は、決定的に離れ始めていた

