廃部寸前な手芸部ですが、ユーレイ部員が助けてくれるようです!?

 カァー!
 
「きゃあ!?」
 
 耳元で叫ばれたかのような大音量。
 思わず耳を塞いでしゃがみ込む。
 
「な……に、これ」
 
 カーァ
 カーァ、ガアッ
 
 目を疑った。
 
 黒い羽根を散らすようにしてカラスが一羽、二羽、三羽……それ以上は数えたくない。
 
 そしてその中でもひときわ大きなカラスが一羽。
 こちらをまっすぐ見つめていた。
 
「や、やだ」
 
 今までこんな大きなカラス見たことない。
 っていうか、カラスに囲まれたこともない。
 
 なに? なんなの、これ?
 
 ミサンガをぎゅうと握りしめる。
 するとカラスが威嚇するように濁った声を上げた。
 
「え、これ? これが欲しいの……?」
 
 答えははっきりしていた。
 ミサンガに目を落とした途端に、風圧を感じる。
 ガラス玉のような目が、息の止まりそうなほど近くにあった。
 
「あっ!」
 
 クチバシが手のひらに突っ込んでくる。
 
 熱い!
 そう認識した次の瞬間、えぐるような痛みが手のひらを貫いた。
 
「い……っ」
 
 カァ、カァと周りのカラスが騒ぎ立てる。
 ミサンガをクチバシに咥えた大きなカラスが、祠の上を旋回して私を見下ろした。
 
「……っ」
 
 どうしよう、怖い。
 
 ミサンガが目的ならさっさと飛んでいけばいいのに、このカラスはそうしない。
 まるでまだ目的を達成していないとでも言うように、こちらをガラス玉の目で睨んでくる。
 
 じくじくする手の痛みに突き動かされるように、ベンチに置かれた裁縫セットから糸切りばさみを見つけて握りしめ、カラスに立ち向かった。
 
「ど、どっか行ってよ」
 
 ミサンガを咥えたカラスは無言だ。
 周りのカラスは私の虚勢なんて嘲笑うように、カァカァとひっきりなしに喚いている。
 
 完璧に不利なのは――私だ。
 
「っ……」

 ギョロリと音がしそうな目の動き。
 
 今度は私もよそ見しなかった。
 カラスがベンチに置かれていた他のミサンガに向かって急降下してくる。
 
「やめ、てッ!」
 
 わけも分からず、闇雲に糸切りばさみを振り回す。
 
 刃先が何かに引っかかる。
 構わずに振り払うと――

 プツッ
 
 ぼろぼろのしめ縄が、土埃を撒き散らしながら、弧を描いた。
 
「あ――」
 
 スローモーションのようにゆっくりと舞い落ちる土と、しめ縄。
 そのひとかけらを蹴散らすように――銀の弾丸が、黒のターゲットを撃ち抜いた。
 
 ギャア、とカラスの呻き声。
 周りのカラスも統率を失ってばらばらに騒ぎ出す。
 
 ぼとりと落ちたミサンガ。
 
 それに手を伸ばした私を遮ったのは――
 
「勇気と無謀は紙一重だ。だが、その心意気には敬意を表しよう」
 
 グルル、と低い唸り声と共に聞こえてきたのはそれと同じ声色。
 へたりこんだ私の目の前で、カラスに立ちはだかったその輪郭は――狼、だった。