天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


 シオン様はその髪の色から、パーティーなどにはめったに顔を出さなかった。いつもは、悪意の視線を嫌って人前に出ることは断っていたのだが、今日だけはエリカのために出席したと漫画に描かれていた。

(そういうところもいじらしくて好き……)

 シオン様の姿にキュンとしたのは私だけだったようで、会場内はシオン様に対して中傷の言葉が囁かれている。

「パーティーに闇色の男など不吉だわ。カメラが壊れてしまう」

「漆黒魔導師殿はパーティーなど嫌いなのではなくて?」

「新大聖女をエスコートするためなら我慢できると言うことでしょう」

「まぁまぁ、それは、恋に狂われていらっしゃるのね」

 誹謗中傷のざわめきにムッとして、私はあえて大きな声でローレンス殿下に尋ねる。

「宮廷魔導師様は、新大聖女様の師匠なのですよね?」

 ローレンス殿下はギョッとした顔で私を見た。