「シオン様、あなたにはドラゴンのために幻の薬草を採りに行っていただきます!」

 私は、シオン様の私室でふんぞり返って命令する。突然私がこんなことを言い出したのにはわけがある。

 新大聖女エリカの就任を祝し、王都で盛大なお祭りが開かれることになったからだ。ローレンスとエリカを先頭にして、就任パレードが開かれる。

 こんな情報が入ってくるのは、私が王宮に出した支店のおかげである。

 兄に頼まれ王宮にだしたループス商会の支店は、表向きは名前を伏せ、王宮の一部門のていをとっているが、私が隠れオーナーを務める旅行代理店プルメリアの窓口なのだ。

 宮廷で働く人々は、いろいろな領地へ親書を運んだり、視察へ行ったりすることが多い。シオン様のように大きな魔力を持つ魔導師は、魔法で移動することもできるが、近距離に限定されている。

 また、領地の境目には魔法で結界が張られていることも多く、移動魔法が弾かれる。そもそも、移動魔法はとても難しく使える魔導師も限られているのだ。

 そのため、魔力自動車や魔力列車によって移動することが多い。

 しかし、今までこの国には旅行代理店という概念がなかった。そのため、個人で旅行を手配していたのだが、私の作った旅行代理店の窓口を王宮内に設置したことで、とても便利になった。

 ちなみに、私の家門セレスタイト公爵家では、魔法鉄道事業をおこなっている。

 魔力を凝縮した特別な液体と、魔導具を使って、列車の駆動力にしたものだ。

 はじめは王都とその周辺だけだったのだが、私が我が儘を言って王国中に範囲を広げてもらった。