「お前は王宮に必要だ! 今から俺が……」

 シオン様は緩く首を振った。

「ローレンス殿下が無理を通せば、私の立場も悪くなる。私情を挟んだと、殿下の評判も落ちるでしょう」

 そこまで言われたら、ローレンス殿下は引き下がるしかない。

(そもそもそんなに大切なら、ちゃんと地位を保証してやればよかったのよ!)

 私は思う。

 魔術部門で理解が得られないのなら、自分の秘書なり特別魔導師なりに指名してやればよかったのだ。それをしなかったのは、やはり他人の目を気にしたからだろう。

 もしかしたら、どうせどこでも評価されないとシオン様を侮っていたのかもしれない。
 反論できずに唸るふたりを、私はドアへと押し出した。

「さぁ、さぁ、お帰りは向こうです。今回の無礼は見て見ぬふりをして差し上げますから、早々にお引き取りください」

 そう言ってふたりを押し出すと、ドアを閉めた。